IT企業が「自動車」へと目を向ける必然理由 「CES」で見えた最新技術トレンド
自動車メーカーが自動車関連技術を展示するのは、ある意味当然のことと言えるが、より“CESらしさ”を感じさせるのが、かつて“家電ショーとしてのCES”を支えてきた企業が、こぞって自動車関連に投資や提携を発表していることだ。
すでに北米での“黒モノ事業”から撤退し、デジタルカメラを除く製品はほとんど見なくなったパナソニックだが、現在の津賀体制になってから力を入れてきたB2B2C事業が花開こうとしている。新たな事業としてプロジェクター供給を中心としたディズニーパークとの提携が発表されたが、電装事業への注力が今年のテーマだった。
テスラとの提携による電池事業への傾注は言うまでもないが、自動運転時代の新しい電装システム提案を行っていた。たとえば高速道路移動時だけでも自動運転が実現されれば、ドライバーは運転から解放され、後部座席とテーブルを囲めば車内はエンターテインメント空間へと変化する。リビングルームのエンターテインメント化と同様、そこには新たな事業の可能性が生まれる。
展示こそしていないものの、ソニーCEOの平井一夫氏も自動車メーカーから促される形で、自動運転時代の車内エンターテインメントシステムの提案を持ちかけられていると明かしている。自動運転そのものだけでなく、それが実現した後の時代を見据えた展示が登場し始めた。
サムスン電子は昨年、これら自動車向け電装品への投資が増加することを見込み、車メーカーとの接点を持つため米自動車部品大手のハーマンを買収していたが、今後、電機メーカーの自動車向け投資はさらに拡大するだろう。
IT企業も自動車向け技術開発に参入
一方、CESを彩ってきたIT企業もまた車産業へと目を向けている。インテル、クアルコムといった半導体メーカーはもちろん、アップル、グーグル、マイクロソフトといった、IT業界を代表する企業が自動車向けの技術開発を行っている。ルノー・日産アライアンスのカルロス・ゴーンCEOが、ネットに常時接続される次世代のコネクテッドカーを、マイクロソフトとの提携で開発していくとCES基調講演で語ったのが象徴的だ。
IT企業が車産業へと目を向けているのは、PC業界が飽和しているからだけではない。これまで培ってきた技術を生かせる分野だからだ。中でも今年のCESで象徴的だったのはNVIDIAとアウディが提携して開発した、会場に隣接する駐車場内で走らせた“レベル3”自動運転の実験車両である
NVIDIAはパソコン向けに高性能GPU(グラフィック処理プロセッサー)を開発してきた企業だが、近年は車載向けシステムLSIの開発に力を入れてきた。GPUは画像や動画、音声などを処理する能力に優れており、それらが各種センサーからの情報を分析する自動運転向けシステムにも応用できるからだ。NVIDIAはGPUの能力を汎用処理に用いるパソコン業界の技術トレンドの延長線で自動車向け技術を開発してきた。
テスラに搭載されているのもNVIDIAの製品だ。今回披露された実験車両に搭載された「Xavier(エグザビア)」は、1秒に30兆回の演算を行えるGPUを搭載している。同社の自動運転ソリューションはテスラ、アウディといった自動車メーカー以外にも、ZF、ボッシュといった自動車向け電装品メーカーも採用する。
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