ワインに続け!美味な牛肉を売りこむフランス 対日輸出解禁でじわり攻勢、欧州農業大国の実力は?

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「品質や安全についてはおそらく世界で最も厳しい基準があり、米国との農業交渉では遺伝子組み換え物質の利用などを拒否している」(ギョーム・ガロ農業・農産食品業・林業相付農産食品担当相)。そこには、安全性を強くアピールし、BSE問題で傷ついた欧州産牛肉のイメージを回復したいとの思惑が垣間見える。

一歩一歩着実に、今年の対日輸出目標はまず100トン

 ガロ農産食品担当相は「フランスの肉の味を日本で知ってもらうには、どんな畜産農家が生産しているかという物語を伝えるのも重要」と話す

「焼き加減はミディアムレアが普通だよ」。レストランも経営するマチュウ氏はそう言って牛肉料理を振る舞う。

フランスでは多くの日本人が好む、いわゆる「霜降り肉」をほとんど口にしない。オーヴェルニュ地方の地元紙記者は「日本で神戸牛の料理を食べたら半分以上、脂身だった」と真顔で話す。

財務省の貿易統計によると、日本の2012年度牛肉輸入量は約50万トン。国別では豪州が同31万トンで1位、米国が同13万トンで続く。

これに対して、ガロ農産食品担当相が掲げたフランスの年末までの対日輸出目標は100トン(昨年度総輸入量の0.02%)だ。

「これなら、日本の生産者農家も安心できる数字でしょう」。ガロ担当相はにやりと笑う。

日本の市場で、高品質や安全であることが差別化の決め手になるかどうかは疑わしいところ。多くの消費者は「当然のこと」と受け止めるのではないだろうか。フランスが「風穴を開ける」ためには、日仏間の食文化の違いに対する十分な理解が求められる。

幸い、日本における「フランス」のブランド力は決して弱くない。ワインのボジョレー・ヌーボーは世界レベルで消費が減少しているが、日本は今なお「お得意さん」。消費は依然伸び続けており「ボジョレー人気」が健在だ。毎年11月の解禁日には各地で盛大なパーティなどが催される。売り方の面などでの工夫も浸透のカギになりそうだ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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