ワインに続け!美味な牛肉を売りこむフランス 対日輸出解禁でじわり攻勢、欧州農業大国の実力は?

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 欧州屈指の「農業大国」のフランス。同国の農産物加工品といえば、ワインを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は牛肉も重要な生産品の1つだ。牛の頭数は2011年時点で約1900万頭と、2位ドイツの同1250万頭を引き離し欧州連合(EU)各国で最も多い。

このうち、肉用牛が総頭数の半分以上を占めるという。牛肉生産量は同164万トン、消費量は同158万トンでいずれもEUトップだ(フランス農水省の関連団体、フランスアグリメールの資料などから抜粋)。

マチュウさんが皿に盛った牛肉。自慢の一品だ

牛肉をめぐる状況は、刻々と変化している。日本政府は2月、牛海綿状脳症(BSE)対策による牛肉輸入規制を緩和。フランス、オランダからの輸入受け入れに踏み切った。「フランス国内では供給過剰の状態」(ファーブル氏)。従来から日本に対して市場開放を強く求めてきた同国は、日本への輸出拡大に力を入れる。

オーヴェルニュ地方の場合、「全体の3分の2が食肉牛で、3分の1は乳牛」(農業・農産食品業・林業地方局のクローディヌ・ルボン・オーヴェルニュ地方局長)。繁殖用雌牛は約49万頭と、国内の22地域で最大だ。

「トウモロコシは育たず、肥育にはあまり適していない」(同氏)。それでも、牛肉製品の対日輸出が拡大すれば、子牛の供給増も見込めそうだ。関係者の期待は膨らむ。

同地方の畜産農家経営者が口をそろえてアピールするのは、フランス産牛肉の品質の良さだ。ファーブル氏が育てる牛の飼料は100%天然だ。「高地であることをメリットとして活用し、できるだけ自然に近い状態で飼育している」(同氏)。

 両耳についた耳標で飼育記録や健康状態などを把握することが可能

飼育農家から小売りに至るまでのトレーサビリティ(履歴管理)システムの信頼の高さを指摘する声もあちこちで聞かれた。

「米国の牛肉がフランスと同じような条件で育てられているかどうかが気になる」。子牛供給業者のアラン・マチュウ氏(1ページの写真、左から2人目)はそう語る。

同国の農業従事者には、牛の成長促進目的のホルモン剤投与を認めている米国の姿勢を疑問視する見方が少なくない。

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