北朝鮮亡命外交官が語った「金王朝の弱点」

「民衆蜂起が発生する可能性もある」

前者はチャンマダンでの商売を許されなかった商売人が、道ばたや地下鉄駅の前、マンション構内などで商売をしているものの、保安員が来れば荷物をまとめてバッタのように逃げていく人たちのことだ。

ところが、いまはバッタから「自分は捕まってでも、ここでしつこくモノを売る」という、いわばダニのように居続け、商売を続けるような人たちが増えてきた。そこまでしないと、生きていけないからだ。すでに権力側も彼らに対して強く出ることができなくなっている。経済的問題から当局の政策に反発する住民の芽が育っている。この反発する芽を見ると、民衆蜂起が可能だと思う。

韓米合同軍事訓練がカギ

――専門家らは、今年2月に北朝鮮が何らかの挑発を行う可能性が高いとみている。米国のトランプ新政権発足直後、という理由だが。

北朝鮮は、奇襲的な挑発をよく行う。奇襲的なのは、挑発を事前に知らせれば世論面でのショック効果が縮小するためだ。金正恩は、2016年の新年の辞では「核実験を行う」という言葉を一言も使わなかった。

ところが、(2016年)1月6日に突然、核実験を行った。1月1日から6日まで、世界は北朝鮮に対して「今年は静かに過ごすのではないか」と予想していた。それでも、核実験を突然行った。しかし、2017年の新年の辞は少し違った。金正恩は「米帝(米国)と追従勢力の核脅威と恐喝が続く限り」「われわれの目前で韓米軍事訓練演習が続く限り」などといった前提条件を付けた。これは、米国と韓国政府に対し、交渉条件を先に突きつけたことを意味する。

トランプ新政権は1月20日に就任するが、まず2~3月に「韓米キーリゾルブ」軍事訓練を行うかどうかを決めなければならない。金正恩は「われわれが条件を提示したにもかかわらず、それを無視して韓国と米国が合同軍事訓練を行った」という大義名分が生じる。われわれを保護するために、心ならずも核実験を行うことは当然、という論理だ。

外交官としての経験から判断すれば、おそらく2月16日ごろ、または韓米合同軍事訓練中に核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を計画しているだろう。金正恩は韓米合同軍事訓練を、米国と韓国の対北政策を見極めるリトマス紙として利用している。

――北朝鮮のプルトニウム保有量が約50キログラムになるという。どの程度の威力か。

もし一部で主張されているように、北朝鮮の核兵器が「交渉用」のものであるならば、それほど多い量を必要としない。核兵器は一つだけ持っていれば、十分な効果を発揮する。北朝鮮はいま、プルトニウム量でいえば核兵器10個を生産できるまでになっている。核兵器で韓国を廃墟にしてしまおうというのが、北朝鮮の戦略だ。

――太氏が勤務した英国は、代表的な金融・保険国家だ。ここで不法取引される金正恩の不正資金規模はどの程度になるか。

ロンドンの金融市場は保険・再保険が中心だ。北朝鮮は1980年代からこれまで、ロンドン国際保険市場で数千万ドルを稼いできた。どうすれば可能だったのか。北朝鮮には一つの国営保険会社がある。韓国のように保険会社同士の競争がない。しかも、北朝鮮の朝鮮労働党が指導する社会だ。言ってみれば、事故を操作し、これを検証できない唯一の国だ。

いったん橋や工場などすべての下部構造を国際保険・再保険に加入させる。そして事故が生じて調査を受けるようになれば、文書を偽造する。このやり方で1年に数千万ドルを稼いできた。しかし、今年は北朝鮮への制裁が始まり、EUや英国の制裁で保険会社が追放された。ロンドンの金融業で数千万ドル稼いできた収益源がなくなった。金正恩の不正資金が英国の金融機関にあるかどうかは、私が知る範囲ではないが。

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