北朝鮮亡命外交官が語った「金王朝の弱点」 「民衆蜂起が発生する可能性もある」
――いつごろ英国の保険に加入し、いつから切られたのか。
1980年代初頭から活発に行われてきた。保険加入が難しくなったのは、北朝鮮の核実験以降、2016年5月にEUの独自制裁が行われてからだ。英国からは5月に、公式的に口座を凍結された。これにより、北朝鮮のカネは英国の銀行ですべて凍結された。北朝鮮は国際金融市場から追い出されたようだ。
――国連による対北朝鮮制裁案に金正恩の名前が載るように、圧力をかけなければいけないのではないか。
金正恩は自分の名前が載るのではないかと恐れ、北朝鮮外交官も名前が入らないように総動員されている。国連決議に金正恩という名前が入ってしまうと、金正恩がロシアや中国など外国に行く道が閉ざされる。中国やロシアは犯罪者を招き入れてしまうことになってしまうからだ。
北朝鮮国民は国連の制裁決議がどのような意味を持つのかをよく理解していない。ただ、金正恩を裁判にかけるべきという決議案が採択されたというニュースが流れるだけでも、その波及力はある。北朝鮮国民は裁判にかけられるというのは犯罪者だということを知っている。そのため、金正恩を裁判にかけるとなれば、「金正恩は犯罪者」だという強いメッセージを国民に伝えることになる。そのため、金正恩という名前を、国連決議に載せなければならない。
――金正恩がスイスで生活していた時、偽名で欧州旅行やほかの国を訪問したケースがあるのか。
金正恩がスイスでどのような生活をしていたかは知らない。
――2015年に金正恩の実兄である金正哲がエリック・クラプトンのロンドン公演を見に来た際、同行していた。一部では、金正哲が自由奔放だという評価があるが。
金正哲の性格を一言でこうだと言うのは難しい。しかし、メディアで報道されているように、背後で金正恩を補佐しているとか、ナンバー2だとか、一定の職務と影響力を持って北朝鮮の政治に介入しているというのは事実ではない。
「生活が変わるなら、いっそ戦争も」
――韓国主導の統一について、北朝鮮住民の感情はどうか。
北朝鮮の大多数は、本音では韓国主導で統一されればいいと思っている。平壌市のエリート層の間でよく言われる冗談がある。「早く戦争でも起こればいい。どうなってもわれわれが勝つだろう」というものだ。どんな意味かと言えば、平壌市内で運行されていたトロリーバスが停電になったという。通勤時間にトロリーバスが止まれば、イライラしてしまうものだ。そんな時、ある人が「こんな停電がよく起こる場所で生きるには、戦争でも起こればいい」と叫んだ。バスの乗客全員がその人に目を向けたが、「どうなってもわれわれが勝つさ」と付け加えたという。
これには、これほど厳しい生活を送るなら、米国や韓国が戦争でも起こして、そんな苦痛を止めたいという民心が反映されている。この冗談は、平壌で生活してきた人で脱北者であれば誰もが知っている。北朝鮮の人はすでに70年の年月が過ぎたことに飽き飽きしている。どんなことになっても、早くそんな苦痛を消し去って生きてみたいという共通の心理がある。
――統一のためにはどんな政策が必要か。
いくつかの方法がある。まず、金正恩政権を軍事的に崩壊させることもある。もう一つは、住民の気持ちを統一へ向かうように誘導して平和的に統一する方法だ。軍事的な方法よりは、住民の気持ちを誘導して統一されることを望んでいる。韓国のドラマや映画を見た北朝鮮住民は「韓国は発展している、韓国は本当に裕福な国だ」と認識している。反面、「同じ民族なのに、なぜわれわれは貧しいのか、われわれも韓国のように裕福な国に住めばどうなるだろうか」といった疑問を持つことがない。