人材価値を作る上で、知的処理能力と同等かあるいはそれ以上に重要なのは人間関係を作る力であり、自分にとって有効な人間関係の集合である「人脈」が果たす役割が大きい。
そして、人間関係を作る力も人間関係のポートフォリオである人脈も、作り・育てるには時間と努力の投資が必要だ。そして、この投資が上手く行くと、良い人脈は実質的に本人の能力のように機能して、人材価値を高めてくれる。
勉強会を作って、幹事を務めて「汗をかく」
新年でもあるので、ビジネスパーソン読者にも大学生にも役立ちそうな方法を一つご紹介しよう。自分の目的に合った人脈を効率的に作るには、「勉強会」を作って、その幹事役を自分で務めることが極めて有効だ。面倒でも自分で幹事になることが「肝」だ。
なぜ自分で幹事になることが重要なのだろうか。勉強会は、そのテーマとメンバーを梃子にして、別の優れたメンバーを募ることができるし、有力者や偉い先生にアプローチすることも可能だ。つまり、個人の力以上の対人関係を作ることができるし、しかも、その相手を自分の目的に合わせて選ぶことができる。
また、幹事を務めていると、メンバーとのやり取りを通じて連絡が密になるし、面倒を引き受けることで軽い「恩」を売ることもできるので、会を通じた人的つながりを、自分の「人脈」に転化するうえで極めて有利なのだ。
「何だ当たり前のことではないか」と言われるかもしれないが、意外にできないものなのだ。ビジネスパーソンにも学生にも有力な方法だし、むしろビジネスパーソンにとってこそ有効かも知れない。
かつての筆者は、「勉強会に呼ばれて喜んでいる人」であり、面倒な幹事役にかかわることがないのを幸いに感じていた。しかし、後になって、幹事や事務局を務めていた人々の大成功を見ることになる。もっと早く気がついていれば、と思わずにはいられない。
私事で恐縮なのだが、昨年末に「偏差値『10』の差を逆転する時間と努力の投資理論」(星海社新書)という本を出した。逆転の仕方について、主に大学生生活の送り方のあれこれに着目しているが、同時にビジネスパーソンが自分の人材価値を上げるにはどうすればいいかを率直に論じている。書いてみて、自分自身が、なぜ、出身大学の偏差値並みの出世や大儲けをできなかったのかがよく分かった次第だ。
当連載の筆者であるかんべえ先生(吉崎達彦さん)も、ほぼ同時期に「気がついたら先頭に立っていた日本経済」(新潮新書)を上梓しておられたが、2017年の日本経済を考えるうえでとても面白い切り口で書かれている。両方読んで頂けると、有難い。
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