このところ筆者は、あいかわらず朝起きるとまずツイッターのアカウントを開いて、「昨日は何を言っていたんだろう」とチェックする日々が続いている 。もちろんトランプ氏のことだ。フォロワー数は、今週でとうとう2000万人を超えた。たぶん、世界中で同じことをしている人が大勢いるのだろう。だって次期合衆国大統領ともあろうお方が、ウチの会社を名指しで攻撃してくるかもしれないんだもん、たまったもんじゃないよね。
「水戸黄門の世直し」のようなツイッター!?
ツイッター攻撃を受けた企業は、続々と恭順の意を示している。フォードはメキシコへの工場移転を中止し、800人から1000人程度の雇用を維持することにした。トヨタ自動車はメキシコでの工場建設を止めないが、「向こう5年間で100億ドルの対米投資をする」ことを宣言した。「F35戦闘機の契約金が高過ぎる」と文句を言われていたロッキード・マーティン社は、大幅に値下げするとともに、国内雇用を1800人増やすことを明らかにした。
なんだか「水戸黄門の世直し」みたいである。この紋所が目に入らぬか!とばかりにトランプ氏がグローバル企業を叱りつけ、工場の海外移転を止めさせて支持者から拍手喝采を受ける。もっとも裏では、「うむ、後ほど税制の優遇措置を与えよう」などと、話の分かるところを見せているかもしれない。ますます水戸のご老公のようではないか。
個々の企業への恫喝劇は、政治的なパフォーマンスとしては悪くないだろう。少なくとも、大統領就任までに政治的な得点を挙げることができる。だからといって、経済政策の代わりにはならない。言っちゃ悪いが、数千人単位で雇用を増やしたところでたかが知れている。例えば第2期オバマ政権の2013年から2016年の4年間で、米国の非農業部門雇用者数はざっくり1040万人も増えている。全米人口は3億2310万人、人口増加率も年間1%近くある。アメリカ経済を盛り上げていくのは大変なことなのだ。
経済全体のことを考えたら、せいぜい1200万人程度の製造業の雇用にこだわる必要はない。ところが次期大統領はモノづくりにご執心で、貿易不均衡是正や中国叩きに熱意を示している。なにしろトランプ氏当選の原動力となったのは、白人ブルーカラー層の熱い支持であった。彼らに報いるためにも、目に見える成果を出したいと考えているのであろう。
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