【産業天気図・スーパー/コンビニ】値上げラッシュ家計直撃で08年度は「曇り」模様。PB拡販で消費者の防衛意識を崩せるか
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
2008年度もスーパー・コンビニ業界は「曇り」空に覆われそうだ。原材料高等に伴う一段の仕入れ高で販売価格の値上げが避けられない一方、消費者の財布のヒモは固く、各社は価格戦略に腐心している。同時に安全・安心への意識も高まるなか、割安で利益幅の大きい自社開発商品(PB商品)を強化する動きが目立つ。今年度はこうした価格や商品面での差別化策の真価が試される年となりそうだ。
総合スーパー最大手のイオン<8267>は、前07年2月期に設立した開発会社を軸にグループPB「トップバリュ」を拡販する。グループ共同仕入れや直接取引拡大と合わせ値上げに対抗、価格訴求を継続する構えだ。ただ、衣料品など非食品の苦戦は今期も続く見通しで、業況の好転は望めない。収益改善は総合スーパーのリストラ策次第だろう。セブン&アイホールディングス<3382>傘下のイトーヨーカ堂も、グループPB「セブンプレミアム」の拡販に注力。前期にグループ入りした「ヨークベニマル」との共同仕入れを軸にテコ入れを図る。3年間で5~6店舗の閉鎖も計画する。
一方、食品スーパーは比較的堅調だ。価格転嫁が進んだ影響で既存店売上高が前年を上回る企業も多い。ただ、今後一段の値上げが進行した場合、食品を中心とした生活必需品でも消費者の買い控えが懸念される。また、今期の新規出店も高水準で「パイ取り合戦」は激しさを増すことが予想され、楽観視できない状況が続く。
コンビニ業界にも仕入れ値高騰など、「値上げ」関連の問題が押し寄せる。各社は広告宣伝や商品開発をはじめ、さまざまな方面から加盟店支援を強化する考えだ。たとえば、業界2位のローソン<2651>は今09年2月期で支援経費を50億円積み増すため、減益を見込むほどだ。
今期の焦点となるのは「たばこ特需」の影響だ。成人識別カード「タスポ」の自販機導入で、対面販売の数量増が見込まれる。すでに先行した九州や東北では、5割~8割程度の伸びを記録しているという。その影響で、5月の既存店売上高は、セブンをはじめローソンやファミリーマート<8028>など大手コンビニは5%程度の大幅プラスに転じた。7月には関東圏への導入も予定されている。どこまで上積みできるか注目だ。
もっとも、重要なのは新規顧客の開拓であることに変わりはない。これまでコンビニを利用しなかった層の来店も予想されるため、各社は主力の米飯を中心にメタボ対策弁当や刺し身総菜など、客層拡大策を打ち出している。厳しさを増す環境の中、今後も利用を見込める新規客をどれだけ開拓できるか。成長を賭けた勝負の年になるだろう。
【鈴木 良英記者、田邉 佳介記者】
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