「宝塚すみれ発電」が急成長を続けている秘密 「市民発電所」が目指していることとは?

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ただ一方で、太陽光発電の急拡大が社会問題化している、との指摘もあります。国が再生可能エネルギーの普及を進める中、住民らが自然や景観の保全を求めて反対するケースが出てきています。地元自治会が、木々の伐採で洪水や土石流などの災害につながる、とメガソーラー設置反対の申し入れを市に提出した例もあります。再生エネルギーの活用というプラスの効果と環境破壊というマイナスの影響を慎重に見極めることが必要です。

地域住民を無視した大規模開発は、今後、見直しを迫られることでしょう。この点で、井上社長が取り組んできた地域主体の発電所作りという姿勢が、ひとつの解決のヒントとなる気がします。農産物と電気の地産地消を真剣に考え、地方公共団体と地域の方々が一体となった活動を粘り強く進めることが、遠回りと見えても、周辺住民の理解を得られる最良の方策なのではないでしょうか。

無償で引き取った太陽光パネルを再利用して

牛乳工場の屋根に太陽光パネルを設置した(写真:宝塚すみれ発電)

こうした視点から、新しい試みとして取り組まれたのが「宝塚すみれ発電所第5号」と言えるかもしれません。2016年2月、牛乳工場の屋根に太陽光パネルを設置したのです。

工場の屋根なので、景観を損ねたり自然環境に悪影響を与える可能性は少ないと思われます。そして特筆すべきはその設置費用です。従来は、1000万円ほどかかる費用が、320万円で納まったそうです。

「繊維工場が移転するので、そこに付いていた太陽光パネルが余ったのです。そのままでは廃棄処分になると聞いて、それなら私たちが引き取りましょう、と言いました。無償で引き取った太陽光パネルを再利用して、牛乳工場の上に取り付けました。廃棄パネルの削減というエコ事業と、工場での電力と経費の削減という省エネの効果があります」と、井上社長。2月からの稼働なのでまだ年間実績は出ていませんが、月間では2200kWhの発電量で、25%の削減効果があるそうです。中古パネルの再利用事業という新しい可能性がでてきました。

今年4月、電力小売りが全面自由化され、個人の家庭でも電力会社が自由に選べるようになりました。そして、紆余曲折はあるでしょうが、2020年には発送電の完全分離も予定されています。地域の人々が宝塚すみれ発電所から電気を買える時代が来るかもしれないのです。

「すみれ発電所の運動をきっかけに、再生可能エネルギーを生かしたまちづくりが大きな流れになっていくことを期待しています。発電所建設に協力してくれたお祖父さんが言われていたように、未来の子どもたちのための再生可能エネルギーの活用をさらに進めたいと思います」

すみれ発電の総発電量は、第1号発電所稼働の2013年には1万5000kWh、それが2016年には18万kWhと予想され、右肩上がりの増加となっています。近い将来、2カ所の発電所建設も予定され、さらなる飛躍も見込まれます。井上社長の夢は、未来に向かって大きく羽ばたいているようでした。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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