今後、政府はIR実施法の策定を正式にスタートする。一方、自治体、経済界は、IR誘致、IR事業化の準備を開始する。IR実施法の成立後には、国が自治体(市町村が発議)から提案を公募して選定する(手あげ方式)。そして、自治体が事業者から提案を公募・選定することになる。
日本のIR区域数の上限はIR実施法で法定されるが、超党派IR議連では「全体で10カ所ほど、道州制の広域ブロックに一つずつ」という大枠が共有されている。
現在、北海道、東北、関東、中部、関西、四国、九州などのブロックで、一つ、あるいは、複数の市町村がIR誘致に名乗りを上げている。同一ブロック内で、複数の市町村が誘致に取り組む場合、市町村間の激しい誘致競争となるだろう。
一方、IRに取り組む企業は、まず、大きく2パターンに大別される。一つは、IRを開発・経営するIR事業コンソーシアムの創業株主を目指す企業群、もう一つは、IR事業コンソーシアムに財・サービスの納入を目指す企業群だ。IR事業コンソーシアムの創業株主を目指す企業群は、大きく3パターンに大別される。IR誘致エリアに根差した企業(地元経済界)、全国区の大企業(都市開発系、レジャー開発系など)、そして、外資カジノオペレーターである。
関東・関西IRの利益は世界最大級になる
日本のIRは、都市部、地方部とも大きな利益が期待される。IRの利益規模は、後背とする商圏の大きさ(日帰り圏内の経済規模)、施設数(施設間競争)でほぼ決定する。
日帰り圏内の経済規模をもとに関東IRの収益規模を算出すると、営業利益は2000億円になる。関西IRの場合も、営業利益1000億円規模が見込まれる(2021年度以降の想定)。
先行するアジアにおける3大施設はどうか。シンガポールの「Marina Bay Sands」の営業利益は1300億円、「Resorts World Sentosa」は433億円、マカオの「The Venetian Macao」は1019億円である(2015年度実績)。アジア3施設は、それぞれ単一施設として世界最大級の収益力であるが、関東IRの収益はそれら以上、関西IRはそれらと同等の規模となりそうだ。
地方部のIRであっても、十分に世界上位と肩を並べるようなポテンシャルがある。とくに北海道ブロック、東北ブロック(仙台空港周辺への設置を想定、集客範囲は岩手県・宮城県・福島県)、四国ブロック(鳴門市への設置を想定、集客範囲は兵庫県、香川県、徳島県)、九州ブロック(佐世保市への設置を想定、集客範囲は福岡県・佐賀県・長崎県)のIRは、それぞれ20兆円前後の経済規模を誇っている。この経済規模をベースに試算すると、北海道、東北、四国、九州もそれぞれ営業利益100億円以上のレベルになることが想定される。
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