日本版カジノは大きな成功が約束されている カジノ反対論者は事実をもとに冷静な判断を

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これだけ大きな経済効果があるIRだが、副作用を懸念する声もある。もちろん、副作用についてはきっちりと手当てをする必要があるのだが、反対論者の主張は事実を正しく認識していないケースが多い。

以下にIR推進法の成立までの議論における典型的な「IR反対論」とそれに対する回答を示す。主に経済的な側面に焦点を置いている。

【反対論 1】海外ではカジノ産業は衰退しており、日本でIRを導入しても経済効果は大きくない。米国のアトランティックシティ(ニュージャージー州)などでカジノ施設の経営が悪化しているのをみても、明らかだ。

→回答 日本と米国では事業環境が異なり、比較の意味は乏しい。米国は競争の結果、カジノ施設は1000カ所に拡大し、一部エリアで過当競争になっている。一方、アジア・パシフィック各国では、政府が施設数を少数に管理し、ほぼすべての施設が高収益を維持している。そして、日本も同様の制度設計となる見通しである。

ちなみに、直近、アトランティックシティでは、一部施設の閉鎖の結果、施設数が適正化し、足元の残存施設の利益は2010年以降の最高益となっている。

マカオは失敗している?

【反対論 2】マカオは、中国の習近平政権の腐敗取り締まり強化で市場が縮小した。カジノのビジネスモデルのもろさを露呈しているではないか。

→回答 マカオは、政府方針に沿い、コタイ地区にIRを集積させ、カジノ中心から観光地へと変貌を遂げた。その結果、カジノ市場は8月以降、回復し、成長軌道に復帰している。ちなみに、ボトムであった2015年度でも6事業者の営業利益の合計は約4000億円と大きかった。

【反対論 3】アジア、日本のカジノ収益の多くは、日本人客に起因するはず。海外客からの収益が主とならなければ、国際観光に貢献しない。
メルボルンでは古い倉庫街(手前)がIRによって近代的な街並みに生まれ変わった(写真:編集部)

→回答 確かに、アジア・パシフィックのIRでは、カジノ収益の6~8割が日帰り圏内の住民。そのため、シンガポールのような都市国家を除けば、収益の多くは内国人にとなる。ただし、IRが生み出す地域観光への貢献は、カジノ消費という狭い範囲ではなく、IR全体の集客とIR内外を含む周辺都市における消費、広域観光のハブとしての広域への送客効果と消費の総計である。それら国際観光への貢献は、外国人のカジノ消費よりはるかに大きくなる。

なお、IR内のカジノ施設(施設面積の5%内外)から得られる利益は、IR内の非カジノの観光アトラクション施設群(ホテル、MICE、劇場など。同95%内外)だけでなく、周辺の都市インフラ整備・街づくりにも用いられ、広域観光活性化のエンジンの役割を果たすことができる

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