日本版カジノは大きな成功が約束されている カジノ反対論者は事実をもとに冷静な判断を

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【反対論】カジノの収益は、消費行為における所得(購買力)の移転でしかない。カジノ収益の増大は、顧客の他の消費支出減少というカニバリゼーション(共食い)をもたらすはずだ。

→回答 カジノの収益は、顧客に射幸性、サービスを提供した対価。コトの消費である点において(モノの消費でなく)、他のサービス産業と同じ。カジノ収益は、富裕層のレジャー支出などを通じ、消費全体のパイを拡大する。なお、少数管理されたカジノを含む統合型リゾート(IR)は、国内外の富裕層を主な対象とし、固定化している富裕層の資金を循環させる役割を持っている。

社会コストが深刻になるのではないか?

【反対論 5】社会コスト(ギャンブル依存症対策、反社会勢力排除、青少年保護、マネーロンダリング対策)が深刻なものになる。

→回答 先進国の大半は、IR施設を持つが、カジノ施設の運営は厳格に管理され、社会コストは十分にコントロールされている。

とりわけ、ギャンブル依存症対策については、現状、日本は公営競技、パチンコを原因とする問題が放置されている。IR導入を機に、既存の問題も含めて適切な対策を整備すれば、絶対値として状況を改善させることが可能と考えられる。事実、シンガポールは、IR導入を機に、ギャンブル依存症の問題発生率が大幅に改善した。

【反対論 6】外国資本のカジノ企業が参入した場合、日本の金融資産が海外に流出してしまう。

→回答 外国資本が日本のIR事業をコントロール(経営権を獲得)した場合、確かに日本の金融資産が海外に流出するだろう。筆者は、日本産業界、誘致エリアの経済界がIR開発を主導すべきであり、それは十分に可能と考えている。事実、全国の誘致エリアの経済界は、エリアに最適なIRの開発とその運用を実現するべく、自ら事業を主導する方向にある。そのため、地元経済界、日本産業界が中心になって事業会社をつくる形が主流になるだろう

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いかがだろうか。東洋経済オンラインの読者の皆さんには、ぜひ冷静な判断をしていただきたいと思う。

小池 隆由 キャピタル&イノベーション代表取締役

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こいけ たかよし / Takayoshi Koike

1991年山一證券入社。山之内製薬などを経て、2005年にドイツ証券、2010年にゴールドマン・サックス証券に入社。証券アナリストとして、メディア、エンターテインメント、インターネット産業を担当。2012年に、ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶアナリストランキングにてメディア部門でアジア第1位。2013年9月、キャピタル&イノベーション株式会社を設立。カジノを含む統合リゾート(IR)整備に向け経済界への啓発に注力する。e-mail : koike@capital-innovation.biz

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