【産業天気図・鉄鋼】前半は原料高が圧し掛かるが、後半は製品値上げ浸透で雲間に光射し「晴れ」へ
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
2008年度の鉄鋼業界は、前半は原料高が引き続き暗い影を落とし「曇り」が続く。ただ、後半にかけては、製品値上げが浸透。雲間に光が射し込み「晴れ」となる見込みだ。
08年半は、フレート(海上運賃)や鉄スクラップ価格などが急騰。鉄鋼各社の利益を圧迫した。こうした状況は今期も続く一方、今度は主原料である鉄鉱石と原料炭の大幅値上げが加わった。原料炭は、主要調達先である豪州が2度に渡る大雨に見舞われ、一時供給がストップ。中国の大雪被害などの影響もあって、前期比3倍に当たる1トン200ドルで決着した。鉄鉱石も、世界的な需給逼迫を背景に、ブラジル資源大手のヴァーレと前期比65%アップの80ドル弱で合意。ただ、こちらは主要調達先である豪州2社(BHPビリトン、リオ・ティント)が海上運賃コストを考慮したプレミアム上乗せを要求し、未だに合意に至っていない。仮に、豪州勢とも65%アップで合意できたとしても、日本の鉄鋼業界全体での原料コスト負担増は3兆円に上る見通し。「6月中に90ドル台前半で決着するのではないか」との噂もあり、更なるコスト上昇が懸念される。
とはいえ、原料コスト増に対するユーザー側の理解も進んでおり、新日本製鉄<5401>とトヨタ自動車との間では、鋼材1トン当たり2万8000円の値上げで妥結。造船や電機など、他の主要ユーザーとは2段階(上期2万円、下期1万円)値上げで合意したもようだ。原料調達コストが急上昇した前年同期と比べると、製品転嫁に一定のメドが立つ今下期は増益となりそうだ。今09年3月期見通しについて「暫定値」とした新日鉄の値上げ見込み額は1万8000円。会社営業益3500億円からの上方修正は必至な情勢だ。
ただ、上記の状況は、鉄鉱石と原料炭から生産する高炉メーカーに限ったこと。鉄スクラップから主に建材を製造する電炉メーカーは、先行き不透明な部分が大きい。世界的な鉄鋼増産によって、鉄スクラップはかねてから需給が逼迫。そこに、二酸化炭素排出量削減のため、高炉メーカーがスクラップ投入量を増加させたことで、足元のスクラップ価格は1トン当たり6万円(H2、日本鉄源協会調べ)を突破した。1年間で約3万円アップした計算だ。一方で、建材需要は建築基準法改正の影響を脱しつつあるものの、地方での需要を中心に、法改正以前の勢いは望みにくい状況。鋼板に進出するなど多品種化を進める東京製鉄<5423>や、海外展開を進める大和工業<5444>を除くと、電炉各社を取り巻く状況は決して明るくはない。
【猪澤 顕明記者】
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