「仕事中に寝る人」をただ責めてはいけない きっと本人がいちばん途方に暮れている

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とにかく彼と向き合って、ちゃんと話すしかないなと思いました。そして、戻ってきた彼に予定を確認し、面談の時間をなんとかもらいました。ふたりになって、「他のメンバーも嫌な気持ちになるから、ああいう感情的なやりとりはお互いもうやめよう」と言うと、ややふてくされたまま、彼もうなずきました。

現象を語り合うのではなく、認識を共有するようにした

私は彼に、彼の仕事ぶりをどれだけ認め、評価しているか、ということを具体的なエピソードをあげて伝えました。それは本当の気持ちでした。そして、彼がもっと面白い仕事をし、大きな成長をするために、「遅刻常習犯」というレッテルがどれだけ邪魔になるか、周囲との信頼関係を崩してしまうか、説明しました。彼がしている普段の努力も認識しているが、それでも遅刻してしまうのであれば、別の新しい方法を一緒に考えよう、レッテルを返上できるように私も支援したい、と言いました。つまり、「遅刻する」という現象についてだけ語り合うのではなく、将来の彼の目標の「障害物」だという認識を共有するようにしたかったのです。

「あなたのために言ってるのよ」ではなく、「これでは、あなたはつまずいてしまう。どうやって排除しようか?」と話し合うようにしてみたということです。これは、コツとかそういったものではなく、私がなぜそれを言うかということの背景を説明し、理解してもらうために一生懸命に話をしたにすぎません。

でも、彼はそれまでとは違う態度を示しました。彼自身が一番途方に暮れており、どれほどひどいマナー違反だと認識しているか、話してくれたのです。そこで、「周囲との信頼関係を修復しながら、もっと大きく成長できる仕事を獲得するために、何ができるか考える」と共通のテーマを置くことができました。

念のために病院にもいかせ、心身ともに健康だと判明したので、具体的な対応策を一緒に考えました。最終的には、毎朝、ある時間までに「起床連絡」を入れてもらうことに。その時間に連絡がなければ起きていない、ということ。そうなれば徹底的に起こしにかかるわけです。

他のメンバーも一緒に「起こす」作業を手伝ってくれ、みんなで応援しました。その後は、もちろん、簡単ではなかったけれど、彼の遅刻は随分減りましたし、してしまった場合も猛省するようになり、結果的に、私と彼との間に信頼関係が芽生えていくようになりました。仮想敵ではないけれど、同じオブジェクトを追いかけることで、一体感さえ生まれてきたのかもしれません。

あなたの後輩男性がどのような人なのかはわかりません。またあなたとの信頼関係がどれくらい強いのかもよくわかりません。けれど、彼が仕事中に居眠りしてしまう、ということについて、あなたがどんな風に心配していて、なぜ修正したいと思っているか、どんな支援があり得ると考えているか、きちんと伝えることが何より大事だと思います。「寝てたでしょ、いい加減にしなさい」だけでは、あなたの考えていることは伝わらないと思いますから。

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