話がかみ合わない親子に効く「魔法の言葉」 「勉強すべき」という大前提からズレている

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このような状況はいくらでもあると感じています。問題が起こると、その根っ子には双方の認識の違い、つまり前提が食い違っているということがあり、その点を確認しないで会話を進めるため、問題の本質である根っこから遠ざかり、いつまでも解決しないという事態が起こります。

白石さんの例でいえば、お子さんは勉強よりも部活動のほうが楽しいと思っているので、優先事項は部活動となります。つまり、お子さんは「部活動が大切だ」という前提にたってその後の行動を決めようとします。一方、お母さんは「部活もいいが、勉強のほうが大切である」と考えていらっしゃるので、ドリルをやらせるなどの行動を起こします。前提が双方でまったく異なっているので、このままでは平行線で、解決しないのです。

しかもやっかいなことに「前提→事実→結論」では、「事実→結論」の部分が論理的に正しいと、相手は反論ができません。上の例でいえば、「宿題をやってこないのだから怒ることは当然だろう!」という先生は、一見筋が通っているようにみえます。白石さんの娘さんの例でいえば、「疲れているからドリルができない」という“論理”を持ちだしていますね。しかし、言われたお母さんは「それでは何となくいけない気がする」と感じているようですが、一見正しそうな“論理”のせいで反論できず、どうしたらいいか手に負えなくなってしまっています。

魔法の言葉

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では、このような問題が起こってしまったらどうすれば、いいでしょうか。対策は簡単です。次のマジック・ワードを使えばいいのです。

「そもそも?」

「そもそも、なぜやらないのか?」

「そもそも、どうすべきだと思っていたの?」

と聞けばいいのです(ただし、問題が発生しているときは、双方、感情が高ぶっているので、多少クールダウンするという技術を身に付ける必要はありますが……)。

「そもそも?」という問いかけは、親と子など、何らかの上下関係がある中では、上の者から行う必要があります。関係が下の者が行うと、もし矛盾などを感じていたとしても、意見を言うことや反論することを避けてしまいがちです。ですから上の立場にある人が、「そもそも?」と聞き、確認をしてあげる必要があります。

白石さんは娘さんに「そもそも学校には何をしに行っているのだろうか?」「そもそも部活は何のためにやっているのだろうか?」「そもそも勉強はなぜ必要なのだろうか?」という「そもそも」の話をして、この部分で共通認識を得なければならないでしょう。

親子で会話がすれ違うという方は、一度ぜひ「そもそも?」というマジック・ワードを使ってみてはどうでしょうか。原点や前提に立ち戻り、その点を確認してから会話を進めてみると、これまでの問題はきっと多くが解決するはずです。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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