米国農家はなぜトランプを熱烈に支持したか 「TPP離脱」宣言で、期待から一転不安に

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実際に大統領選挙に関する世論調査でも、米国の農家によるトランプ支持は圧倒的だった。

大統領選挙直前の10月、農業政策情報を提供するアグリ・パルス社が80ヘクタール以上の農地を持つ企業的農家に投票先を尋ねたところ、55%がトランプ氏であり、クリントン氏と答えたのはわずか18%だった。別の農業メディアが7~8月に実施した農家の意向調査でも、トランプ氏の支持率は73%で、クリントン氏はわずか10%に過ぎない。トランプ氏はクリントン氏に比べ、前者の調査では3倍、後者では実に7倍もの支持をかき集めたことになる。

アグリ・パルス社のサラ・ワイアント社長は「トランプ勝利は過去からの『チェンジ』を求める声が強かったからだ。(4年前の共和党大統領候補の)ロムニー氏に比べ、農家や農村に住む人たちの投票率は高く、民主党系の農家の多くもトランプ氏に投票した」と説明する。

環境規制の負担に不満がたまっていた

「クリントン大統領はストップ」。普通の道路標識だが、意味深のようにもみえる(筆者撮影。9月、アーカンソー州リトルロックで)

同社の調査では86%もの農家が現状に「不満」を訴えていた。特に激戦州として選挙戦の行方を左右した、フロリダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、オハイオの各州では、不満率が90%を超した。チェンジを求める声は8年前、民主党のバラク・オバマ候補を大統領の座に押し上げたものの、皮肉なことに今年はクリントン氏の足を引っ張った。

同調査によると、農家の不満の矛先は、経済成長の低迷や財政赤字の垂れ流しのほか、環境規制にも向けられた。「さまざまな規制による負担は、農家の規模や支持政党、性別を超えて、幅広く不満がたまっていたことを示している」と同社長は解説する。

農家の熱い支持を受けて次期大統領に当選したトランプ氏と農業界の蜜月。現時点でお互いの関係は悪くないようだ。最大手の農業団体、アメリカン・ファーム・ビューロー(AFBF)の幹部会議の場にトランプ本人が直接電話を入れたり、8月に組織した農政顧問団には共和党主流派を多く登用したりするなど、農家の間には期待も高まっている。

オバマ政権で強化したさまざまな規制を取り払う方向で、トランプ氏が今後動くのは間違いない。議会の上下院を制した共和党の多くも、オバマ氏の負のレガシー(遺産)をひっくり返すことに賛成であり、農家の望む規制緩和は進むだろう。

しかし、トランプ農政に、不安が漂うのも確かだ。

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