「ショック」だったが、株は「買い」と判断する理由は何か
いわゆる「何とかショック」の直後に、この種の原稿を書くのはなかなか難しい。市場は動きが激しく不安定になっているので、自分が書いたことが大外れになったり、あるいは原稿発表までに市場の動きに追い着かれたりする。
今回の「トランプショック」で、筆者は、後者の状況に追い込まれた。本稿は木曜日〆切り、金曜日掲載のスケジュールなので、できれば草稿を〆切り前日の水曜日に書きたい。「トランプショック後の株式は『買い場』ではないか」という仮タイトルで、米国大統領選の開票が行われた11月9日(水)のNHKの夜の7時のニュースを聞きながら、ショックによる株価下落は「買い場」とする原稿を書き始めた。
かなり不安な思いもあったが、男らしく(ヒラリーさん、ごめん!)、どちらかに決めよ、と言われたら、筆者は「買い場だと思います」と答えるだろう、というようなことを書いた。
しかし、せっかく思い切って書いたのに、半日にして市場に追い着かれてしまった。競馬で言えば「単騎逃げ」のつもりで逃げ馬に乗った騎手が、2コーナー過ぎの直線で早くも捲(まく)られて、他馬に並ばれたような心境である。結局、10日(木)の日経平均終値は1092円高と、ショック前の株価を上回った。
筆者が、トランプショックを「買い場」と見た理由は以下の通りだ。
まず、トランプ氏が大統領になったからといって、彼が何でも好きなようにできるわけではない。現実問題としては、議会との関係が重要だ。議会は、共和党が上下両院の多数を押さえているが、たとえば上院でほんの何人かが造反すると、トランプ氏の政策は議会を通らない。
共和党は、トランプ大統領の顔を立てる必要はあるが、御輿の上にトランプ氏を乗せて、共和党の政策を進めることができる。民主党多数の議会で大統領と議会がねじれるよりは、「トランプ氏が共和党の政策に乗ればいい」のであるから、構造がシンプルではないだろうか。
在任中からしばしば無能をからかわれたジョージ・ブッシュ元大統領(息子の方)でさえ大統領が務まったのだから、経済が大混乱するような不連続で大きな変化は起きにくいように筆者には見える。
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