山崎元氏「トラショック後の日本株は買いだ」 「暴言エロオヤジ」がヒラリーに勝ったワケ

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トランプ氏は、何かを成し遂げたくて大統領を目指した人ではなく、大統領になりたくてあれこれ主張を使い分けた人だろう。自分のキャラクターと体面を維持できるなら、共和党の政策に沿って動くのが彼にとっては好都合なはずだ。

また、こと経済に関して、米国の経済が後退するような状況をトランプ氏が望む理由がないし、経済というものはなかなか「しぶとい」ものだ。トランプ大統領だからといって、米国企業の収益が減少すると考える理由がないし、一部に象徴的な関税強化のような政策が指向されることがあっても、米国民の経済厚生が大きく損なわれるような貿易の縮小は行われないだろう。

「経済に関する限り、事態はあまり変わらない」ということが理解されるのと共に、株価も「普通に」形成されるようになるのではないだろうか。意表を突かれたショックではあったが、経済については急に何かが悪化するわけではないことが伝わって株価が戻った「ブレグジット(英国のEU離脱)ショック」と似たパターンになるのではないだろうか、と考えた。

為替は株価より新材料を速く・賢く消化することが多い

相場観察的には、当初の原稿執筆時点(9日水曜日、19時半)の為替レートが、103円台にまで戻ったことも一つのポイントだった。為替が意外に落ち着いていることは、「トランプショックが相場に織り込まれて、そう大したことが起きるわけではないことが理解されてきたのではないか」という推測をサポートする材料だったのである。

経験則的に言って、株式市場よりも為替市場の方が新しい材料を速く・賢く消化することが多い。従って、水曜夜の時点で株価反転の原稿を書くのは、それほど勇気のいることではなかったのだが、こうした簡単な予想があっという間に現実に追い越されたのが今回の拙稿の顛末である。

以上のようなわけで、筆者は、トランプ氏が「割合普通の共和党大統領」になるのではないかと予想している。今後、人事などを通じてそうした方向性が見えてくるなら、「トランプリスク」が漠然と恐れられていた状況と比較するとポジティブなサプライズとなりやすいのではないか。相場的には、プラス材料が出る可能性が大きいように思う。

トランプ次期大統領が近い将来何をもたらし、特に、日本にどう影響するのかという点については、幸い、本連載では、来週、米国通で広範な情報網をお持ちのかんべえ先生(双日総研副所長・吉崎達彦氏)の順番が来るので、楽しみに待つことにしよう。

何せ、会社員に喩えるなら、われわれ日本人にとって、米国大統領は親会社の社長に相当する(ちなみに、日本国憲法は「子会社の定款」くらいの位置づけになる)。相場だけでなく、今後の身の振り方を考えるためにも、次週の本連載は必読だ。

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