本当の格差は「無形資産」によって生まれる リンダ・グラットン氏、安倍首相夫人と共演
安田:社会が変わるかどうかの前に、長寿社会について一言いいですか。私はやりたいことがたくさんあるから、健康寿命が延びることはとても嬉しい。でも、浜田さんはとても悲観的ですよね。控室でも「これから先どうしよう」とか、「老後のためにこれだけ貯蓄しなきゃ」などと心配していました。バリバリ働いて、社会人としてロールモデルになる浜田さんのような人が、「まだ頑張らなければならないのか」と思ってしまう。そういう社会構造がいちばん問題なんですよね。
日本でバランスのある生活を送っている人は少ない
浜田:今日は、私はネガティブ担当としてあえて悲観的なことばかり申し上げます(笑)。日本ではバランスのある生活を送っている人が少ないのだと思います。私自身、仕事にやりがいはあるけれど、子育ては実の親に任せっきりで、私生活がほとんどありません。こうした生活が続くのはつらいなあと思う人は多いのではないでしょうか。
安田:結論から言うと、それは個人の責任ではないんですよね。終身雇用や年功序列なども、批判は多いけれど今なお続いている。なぜ変わらないのか。社会全体が変わらないのには理由があって、自分ひとりが働き方を変えても、あるいは1社だけが人事システムを変えても、それがプラスになるとは限らないからです。むしろ自分だけ変えると本人が損をしてしまうことが多い。そのため何か大きなショックによって変わっていくしかないのですが、私はそうした変化の兆しがあると思っています。
そのひとつが介護離職です。今まで、ワークライフバランスだとか女性の社会進出だとか言われてきても大きな変化がなかったのは、人事を担当する、働き方を決める立場の人がシニアの男性だったからです。なかなか「自分事」として考えられない。ところがこの世代は今、親の介護で辞めるケースが続出しています。今後も増えていくでしょう。今のままの働き方では立ち行かなくなるぞという大きなショックが訪れる。これによって社会が大きく変わる可能性があります。
グラットン:日本の歴史的かつ複雑なシステムを変えていくには、本当に何らかのショックが必要ですね。技術の進化や長寿化、あるいは少子化がショックになっていくのかもしれません。
私自身は、日本の企業の経営陣に女性がほとんどいないという現状にあらためて驚いています。特に若い女性は、自分たちの立場を認識し、立ち上がらなくてはなりません。
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