韓国の例から考える、独立した選挙管理機関
政党や候補者間の公平な競争を保ちながら正統とみなされる選挙を運営することは、「選挙管理」の問題として捉えられる。選挙管理とは、広く言えば、選挙制度の設定や、その中での選挙区割りの画定、選挙違反の摘発、有権者の登録、投票の監視、開票と獲得票数の確定といった作業を行うことだ。
日本では、選挙制度は国会議員が決めるし、区割りも有識者の審議会と総務省の作業を受けて国会で議決される。選挙違反を摘発するのは警察で、有権者の登録は地方自治体の仕事になっている。
選挙管理というと、実際の選挙で立会人が投票を監視し、開票作業を行うという、投票所での実務的な営みを想像しやすいが、これは国際比較の観点からすれば、非常に限定的なとらえ方である。
大西裕編『選挙管理の政治学』が明らかにしているように、隣国の韓国には、選挙制度の設定や選挙違反の摘発、有権者の登録などにかかわる広範な権限を持った選挙管理機関が存在する。
この機関の任務は、正統とみなされる選挙を運営することだ。そのために必要な権限と、他の省庁並みの人員を与えられている。
重要なのは、この機関が政治から一定の独立性を保持していることである。韓国には、経済成長のさなかで独裁的な政権を許してしまった経験から、中立で公平な選挙管理への強い要請が存在する。
そのために、政治家の命運を左右する選挙制度の設定や区割りの確定までもが、有識者を中心とした、政治から独立した機関によって行われるようになったのである。
このような独立した選挙管理機関の存在は、現在、民主化途上にある諸国にとっても、見習うべき制度モデルと考えられている。
韓国に比べて、日本の選挙管理には危うさもある。典型的には、最近の選挙制度改革で比例代表の少数政党優遇枠が提案されたことを思い起こしてほしい。
国会議員自身が自分たちを選出する選挙制度を設定しようとすると、現政権や現職に有利で奇怪といえる制度を設定してしまうこともある。そのような選挙制度改革は、長期的には選挙の正統性を掘り崩し、選挙結果を受け入れ難いと感じる有権者を増やしてしまう。
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