選挙結果を有効にするのは「ガチ」なルール順守
これはたとえば、AKB総選挙などでも同じだ。
指定されたCDの購入者、ファンクラブ会員やモバイル等いくつかのサービスの会員が、それに付属する権利を行使して、好きなメンバーに投票する。すると、その得票順に決まった選抜メンバーが、順位に応じたポジションで次の新曲を歌うことになる。
ファン一人ひとりのCD購入枚数に差があるとしても、1枚が1票という原則は貫徹され、AKB運営側主導による票数操作などはできないことになっている。ルールの順守が「ガチ」でなければファンは結果を受け入れないのだ。
最近行われたAKB総選挙(32ndシングル選抜総選挙)では、システムの不備によって、本来携帯端末1台あたり1契約、1契約につき1票しか認められないはずのモバイル会員(月額315円)が、複数回、契約・投票できてしまったという(なおCDの定価は1600円、モバイル会員は投票ごとに315円課金されるので、これが許されるとCD1枚の値段で5票入れられることになる)。
この問題は、SNSやBBS等で話題になったが、運営側はかなり素早く2票目以降を無効とする旨を発表した。“複数投票するなら、各種の会員登録でルールに則って得た投票権のほかはCDの購入で” という「ガチ」なルールを崩してしまっては、選挙が成立しなくなるからだ。
4月19日に参議院で公職選挙法の改正が可決されたことにより解禁されるネット選挙は、「なりすまし」などの論点も注目されるが、本質的には候補者が等しい条件で競争できるかという問題にかかわるものだ。
候補者はより多くの得票を求めて有権者にアピールしようとするが、その際に、ネットを活用する候補者だけが競争上有利になる、あるいは、なりすましや誹謗中傷などで不利になる、といったようなことは、公平な競争という観点から認められない。このような理屈でネット選挙は禁止されてきたのである。
日本の公職選挙法は、インターネットのみならず、候補者が有権者にアピールする手段を非常に厳しく限定している。
選挙ごとに印刷できるビラやポスターの枚数は定められているし、送ることができるハガキの数にも上限がある。そして候補者が有権者を戸別に訪問することも許されない。だからこそ、候補者たちは選挙カーで自分の名前を連呼するくらいしかできなくなるわけだ。
厳しすぎる規制は、投票のために政党や候補者の情報を求める有権者にとっても不合理である。しかし他方で、お金にあかした特定の候補者の情報だけが有権者に届くというのでは公平な競争にならず、選挙の正統性が保てない。
両者の理想的なバランスを一概に述べることはできないが、ネット選挙の議論に象徴されるように、今の日本では、公平さを追求するあまりに有権者への情報提供手段を制限しすぎる傾向がある。
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