中国側の事情を考えれば、9月11日の尖閣国有化1周年と、9月18日の柳条湖事件の記念日が過ぎるまでは、対日関係改善には動きにくいだろう。おそらく9月の国連総会(ニューヨーク)において、安倍首相と習近平国家主席が「立ち話」する、といった局面が見られるのではないか。そしてその後は、APEC首脳会議(バリ島)や東アジアサミット(ブルネイ)などで、日中首脳会談の機会を模索することになると見る。
それまでは刺激を避けて、中国側の出方をじっと待つことになるだろう。
(3) 10月には消費税増税を決断する
安倍首相が憲法問題を先送りし、対中関係でも我慢を続けるのは、結局、これが控えているからである。参院選後に一番重要なのは、ずばり10月に控えている消費税増税の閣議決定ということになろう。
日本経済は順調に回復中だ。8月中旬に発表される4~6月期GDP成長率も、たぶん年率3%前後の強い数字が出る。だから10月の消費税増税の最終決定には何の問題もない、と思っておられるかもしれない。
ところが消費税増税法案の附則第18条、通称「景気条項」は、それなりに重い。「名目で3%程度かつ実質で2%程度の経済成長」のハードルは、いちおうは「努力目標」とされている。だが、試しに法案の全文を読んでみられたい 。この問題の難しさが実感できると思う。
もはや忘却の彼方かもしれないが、この法案は民主党政権下で誕生している。増税を目指す野田首相と財務省が、民主党内の事前審査を乗り切るために妥協したのが「景気条項」である。民主党内には当時のことを覚えている議員が大勢居るから、その気になればいくらでも議論を蒸し返すことができる。さらにややこしいことに、リフレ派のエコノミストはもともと消費税増税には消極的だ。しかも円安・株高のお陰で、今年の法人税は上振れしそうである。「消費税を上げなくても、しばらく対応できるのではないか」という声は確実に出るだろう。増税を歓迎する人は居ないから、直前になれば増税先送りの大合唱が広がっても不思議ではない。
増税をめぐって、再び大論争が!?
もちろん、ここはいろんな議論があるところだ。当欄の同僚執筆者である山崎元さんは、たぶん増税延期派だと思う(参考:直近の山崎氏のコラムはこちら)。筆者は上げた方がいいという意見だが、その理由については前々回に触れたのでここでは繰り返さない 。もちろん、この秋の景気状況がどうなっているかにもよるけれども、国論を二分する対立となっていることは想像に難くない。
いちばんありそうな展開は、「低所得者対策」と銘打って、来年4月の税率上げと同時に、「新型・地域振興券」(定額給付金でも可)をバラ撒くことだろう。公明党に言いだしっぺになってもらい、「花を持たせる」なんてこともあるかもしれない。もっともその場合、「2015年度までに国・地方のプライマリーバランスの赤字を半減する」という財政健全化目標は、かなり覚束ないことになってしまう。ついでに言えば、海外の投資家や格付機関が日本国債を見る目も、冷た~いものになりそうだが……。
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