「憲法・靖国・増税」、参院選後の安倍政権 吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット

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憲法改正の発議は、無謀なギャンブル

しかるに、そうはならないと思う。理由は簡単だ。安倍内閣が首尾よく衆参で3分の2の賛成を得て、憲法改正を発議したとして、それが国民投票で否決された日には目も当てられないことになる。即座に内閣総辞職となってしまうだろう。せっかく参院選で勝利して、向こう3年間のフリーハンドを得た安倍さんが、そんなギャンブルをやるだろうか。本気で憲法改正を狙うのなら、次の選挙が近づいた瞬間にやる方がいい。それまでは、経済一本やりで行くのが得策ということになる。

改めて確認しておこう。7月の参院選が終わってしまえば、2014年、2015年には国政選挙の予定がない(2015年春には統一地方選挙がある)。普通に考えれば、2016年夏の衆参ダブル選挙が「適齢期」であろう。その時点で日本経済がまあまあの状況であって、消費者物価上昇率も2%前後になっていたとしよう。そのタイミングで、政権3年目の安倍首相が、「憲法改正に向けて次の選挙で国民の信を問う」と言い出せば、賛同者はかなり多くなるだろう。個人的には、改憲手続きを緩和する96条からではなく、堂々と9条改正から始めてほしいと思うが、それは本題ではないのでここではおく。

さらに安倍さんの立場になって考えてみよう。自分は昨年9月の自民党総裁選に勝って、12月の総選挙にも勝った。ただしどちらも本物の勝利ではない。自民党総裁選では、党員票で石破氏に及ばなかった。総選挙では、民主党の分裂に助けられている。今度の参院選で勝利して、国会の「ねじれ」状態を解消して、初めて首相としての地位と権威を確立することができる。

それでは、自分はいつまで首相で居られるのか。自民党総裁の任期は現在2期6年だから、健康状態その他の事情が許せば、2015年9月には総裁として再選され、2018年9月末まで首相の座に留まることができる。トータルでは5年9か月となるから、あの小泉さんを越えて戦後歴代3位の長期政権ということになる。
 おそらく安倍首相にとって、憲法改正は政治目標の最たるものであろう。しかるにそれは、与えられた5年9か月のチャンスのどこかで緒に就けることができればいい。むしろ急務なのは、集団的自衛権の憲法解釈を変え、日本版NSCを設置するなどして安全保障体制を整え、日米関係をより双務的なものに近づけることだ。筆者は安倍側近でも何でもないけれども、その立場になって考えれば、上記結論に至るのが自然であると思う。

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