私が「ネット証券業界はおかしい」という理由 松井証券・松井道夫社長インタビュー

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オンライン証券の投信販売手法は、間違っている

――他社は投資信託の販売も積極的です。しかし、松井証券はそれにも一線を画していますが。

オンライン証券の投信販売のあり方がおかしいと判断しているからだ。

1999年の手数料自由化の際に、私はコンサルティングなどのサービスをすべて廃して、売買執行と情報提供だけの価格に基づいた手数料を頂戴すると宣言し、手数料率を既存の3分の1に引き下げた。その精神と、オンライン証券各社による投信販売の現状とは合致していない。

対面販売の証券会社は販売にあたって、アドバイスなど多大なコストを投下している。しかし、オンライン証券はそうではないにもかかわらず、インターネットで「ノーロード」と称して販売手数料を無料化しているが、一方で、2%といった信託報酬を徴求している商品もある。株式の手数料率に比べると、はるかに高い手数料水準だ。

営業せず、コストを顧客に転嫁しないで販売するのであれば投信会社による直販という方法がある。投信会社がパフォーマンス競争するのは当然のことだし、そこに信託報酬が存在することは当然だ。また、コンサルティングにコストを掛けている対面証券会社が販売手数料を取ることも理解できる。しかし、オンライン証券はそうではない。

投資信託を扱わない理由は、そんな販売は理に合わないと思っているからだ。私は自分の道から足を踏み外すことはしない。哲学とまでは言わないが、そんなビジネスは一生を賭けてやるものではないとすら思う。

だからと言って、私は投資信託そのものを否定するつもりはまったくない。投資信託はわが国にもっと根付かなければいけない。米国では投信残高は1000兆円規模となっているが、わが国ではまだ50兆円程度にすぎない。これから「貯蓄から投資」という本当の流れが起きるとき、投資信託は重要な商品となる。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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