私が「ネット証券業界はおかしい」という理由

松井証券・松井道夫社長インタビュー

ただし、アウトソーシングしているとはいえ、今も社員の相当数はシステム関係の業務にあたっている。コンプライアンス部門の人員も多い。

依然、無意味な競争に明け暮れる業界

松井道夫 まついみちお 1953年長野県生まれ。日本郵船を経て、87年に松井証券に入社。支店、営業マンの全廃など証券業界に新風を吹き込み、以後、証券業界の風雲児的な存在となる。95年、社長就任。株式保護預かり料の無料化、店頭株式の手数料半額化など他社に先駆けた大胆な戦略を次々に打ち出す。98年、わが国初の本格的なオンライン証券取引を開始。

さらにコールセンターにも大変な投資を行なっている。そういうコストを掛けているからこそ、業が成り立っている。そのためにも、極力、余計なことはしない。

たとえば、当社は他社に先駆けてFX取引を開始したが、その後、各社が参入して、揚げ句の果てにスプレッド競争が激化したのを見極めて、私はFX取引における不毛な競争からの撤退を決断した。

つまり、コア事業の盤石化こそが私の経営方針だ。 

――昨秋、松井さんは「1990年代末に生まれたオンライン証券の形態は、終焉の局面を迎える」という主旨の発言を放ちました。その真意はどこにあるのでしょう。市場環境が変化した今、どう思っていますか。

基本的には今も変わっていない。私がオンライン証券を始めたのは1998年5月だった。それから15年ほどが経過している。その間、確かにインターネットで取引を行う顧客層は増えたが、預かり資産で言えばオンライン証券各社を合算しても、野村証券1社には及ばないでいる。

委託手数料率がどんどん低くなるなかで誕生したデイトレーダー層が、市場の流動性を創出するようになり、各社によるデイトレーダーの争奪戦が激化した。なかには、手数料を極端に引き下げてデイトレーダー独占を狙う証券会社まで出てきた。たとえば、当初こそ、市場占有率が当社の半分程度だったところが手数料引き下げによって市場占有率を当社の2倍、3倍に拡大させている。

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