ウェザーニューズ、ライバルは自分? 気象情報の無料アプリ充実も、有料会員停滞

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従来型携帯電話であるガラケーでは、利用可能なアプリを通信会社が選ぶため、利用者の選択肢は多くない。ところが、スマホになると、ネットと同じなのでライバルアプリが激増するのだ。

しかも、ウェザーニューズはスマホ向けのアプリ投入に当たって、スマホならではの工夫を施したため、価格が月額105円から315円へと3倍になった。つまり、ライバルが増えた中で、高価格となったアプリの価値を訴求できていないといえる。

もう一つの理由はおそらく、ウェザーニューズ自身が天気予報関連の無料アプリを充実させてきたことにある。普通に天気予報を知るのはもちろん、花見情報、花粉情報、現在地の天気を報告するとその場所の10分ごとの天気予報を1時間先まで教えてくれる10分天気予報、気象情報番組などなど、無料で利用できるサービスは多彩だ。

無料アプリが充実しすぎて、有料会員伸び悩む?

また、ウェザーニューズのモバイルサービスの特徴は、10分天気予報のように会員が情報提供をすることで天気予報作りに参加する点にあり、そうした参加を楽しむ会員が多いのだが、5つある情報提供ルートのうち、有料会員しか使えないのは「ソラチャット」というチャットだけ。無料会員であればこと足りると利用者が考えているであろうことは、この1年で無料会員が1割以上増えている事実でも裏付けられよう。

自社の無料アプリが最大のライバルという皮肉。たとえば、無料会員が使える情報提供ルートを減らせば有料会員は増えるだろう。しかし、それをやると「成人の日の大雪予報」のような独自予報に役立つ情報数が減るというジレンマがある。あくまでも無料会員の利益を損なわずに、有料会員になればもっと楽しくなると打ち出さなくてはならない。

ウェザーニューズ側は今期の上半期中(11月まで)に、グローバル市場向けにアプリを投入して起爆剤にしたい考えだが、そもそも主戦場は天気好きが多い日本のはず。

はたから見ていると、やや手詰まり感がある。もともとが法人相手の手堅いサービスが基本だけに、うつろいやすい個人相手には、ネットを専門とする会社との協業を考えてもいいかもしれない。
 

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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