2人に1人が「100年生きる」時代に必要な能力 何歳でも「変身できる」力の身に付け方

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ここで著者が説明するのが、マルチステージ、マルチシナリオの人生だ。3ステージの人生では、20代前半まで学び、その蓄積をベースにその後60代、場合によっては70代まで働き、引退生活に入る。マルチステージでは、こんな「画一的な一斉行進」は終わり、各人の人生の状況に合わせて、学びと労働のステージが繰り返し訪れる。人生は多様化していくのだ。

20世紀に入って、経済社会の変化に合わせて、人生にティーンエージャー、引退者というステージが登場した。それと同様に、100年続く人生では、自らの針路を幅広くとって模索する「エクスプローラー」、自由と独立を重視して小さなビジネスを営む「インディペンデント・プロデューサー」、さまざまな仕事や活動に同時並行で関わる「ポートフォリオ・ワーカー」といったステージが現れると著者は述べる。

しかも、これらのステージは、年齢とリンクしない。50代のエクスプローラーがいてもいいし、30代のポートフォリオ・ワーカーがいてもいい。こうして、20世紀とは異なり、各世代が混じり合っていく、というのが著者の主張だ。

80歳で友達は買えない

長い人生、稼がなければ生きていけない。そのために苦痛な労働にどこまで耐えるか、という発想では、100年時代は生きるのにつらくなるだろう。

稼ぐために人生を消費するのでなく、良い人生を過ごすために必要な働き方をしてはどうか? 私は本書から、そんなメッセージを受け取った。仕事中心、おカネ中心の人生ではなく、楽しい人生を軸に、働き方を見つめるべきだというメッセージだ。

必要なおカネを稼ぎつつ、人生を楽しむ秘訣は何か。著者は、その答えも用意してくれている。家族や友人関係、肉体的、精神的幸福、自分についての深い知識、多様な人的ネットワークなどの「見えない」資産、無形資産を蓄積していくことだ。

著者は、資産を「ある程度の期間にわたり恩恵を生み出すもの」と定義する。そう考えれば、たしかにこれらも資産だろう。そして、無形資産も、家や工場設備などと同様、きちんとメンテナンスをしていかないと、価値が毀損されていく。

無形資産は、有形資産と異なり、毀損されたからといって、容易に買い替えが効くようなものではない。80歳になって、生涯の友を「買う」ことはできない。だからこそ、きちんとしたメンテナンスや投資が必要になってくる。

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