「慰安婦」「歴史認識」問題を乗り越える道

「グローバル日本人」になるために読むべき本

こうした本の中で、私が特に重視したのは、『天平の甍』だ。これは、遣唐使派遣を描いた歴史小説だが、日本人がつねに世界の英知を自国に取り込み、それによって国造りをしてきたこと、その苦難の姿を描いて、現代にも通じる教訓に満ちている。

聖武天皇の時代、第9次遣唐使が当時の先進国・唐に派遣される。留学僧として選ばれたのは若い4人の僧、普照、栄叡、戒融、玄朗だった。

当時、大陸に渡ることは命懸けのことだった。しかし、日本の未来のためには、唐の文化をどうしても持ち帰らなければならない。唐ではすでに日本人として阿部仲麻呂が、唐朝の官吏として高位を得ていた。

こうした背景から、唐に渡った4人の若き僧の苦難と帰国までが描かれるが、その内容はここでは省く。ただ、読んでみれば、井上靖が描いたこの4人は、今、海外にいる日本人留学生の姿と必ず重なるはずだ。

阿倍仲麻呂は望郷の念が強かった。しかし、その願いはついにかなわず、73年間の生涯を唐で終えた。彼が帰国を決めた別れの席で詠んだ歌、「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」は、百人一首に収録されているが、中国にも残っている。古都・西安の興慶宮公園に行けは、記念碑があり、五言絶句の形で刻まれている。  

日本と日本人はつねに「迷羊」

続いて『沈黙』も、日本文化を考えるうえでは重要だ。これは、キリシタン迫害を描いた歴史小説で、ポルトガル司祭ロドリゴが日本に来て、神がいつまでも“沈黙”していることで信者たちが拷問や迫害に遭う矛盾に耐えられず、つに「踏み絵」を踏む過程が描かれている。踏み絵(棄教)の後、日本人になったロドリゴに、切支丹弾圧を現場で取り仕切った井上筑後守はこう言った。

「パードレは決して余に負けたのではない。この日本という泥沼に負けたのだ」

日本は、西欧から見ると「泥沼」。この意味するところを、今も私は考え続けている。

日本文化、日本人については、『菊と刀』で示された「恥の文化」、『甘えの構造』で示された依存心(甘え)も重要だろう。また、『三四郎』の中で、主人公の三四郎が西洋文化に触れていく過程で、恋慕する美禰子に「ストレイシープ」(「迷える子」または「迷羊」)と言われ続けることも、ひっかかる。なぜなら、西欧文明に接して以来、日本と日本人は今日までつねに「迷羊」だからだ。

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