最後に元に戻って、先の戦争の「歴史認識」について述べておきたい。自虐史観、皇国史観とよく言われるが、そんな言葉はどうでもいい。ここで重要なのは、あの戦争の本質である。これをもっとも端的に述べているのが『アメリカの鏡・日本』だ。
著者のヘレン・ミアーズは、戦前、シカゴ大学などで日本について教えてきた女性学者で、占領下の日本でGHQの諮問機関「労働政策11人委員会」のメンバーとしても活躍した。そんな彼女が、「なぜ日本は戦争を起こさねばならなかったのか?」に対して、応えたのがこの本である。
平たく言ってしまうと、日本はアメリカなどの西欧列強のまねをしただけ。それをやりすぎたら、滅ぼされたというのだ。日本は明治の開国後、欧米列強諸国のまじめな生徒であったと、ミアーズ女史は述べ、たとえば不平等条約を改正してもらおうと一生懸命に欧米列強のまねをした。そうして、日清、日露の2つの戦争を経て列強の一員となった。
しかし、いざ先生に教えてもらったことを実践し出すと、米英の先生から激怒され、袋だたきに遭ったというのだ。
「世界に勝つ」成長戦略はまだ不十分
以下に、この本の中から、冒頭の「慰安婦問題」にもかかわる日韓関係についての記述を2つ抜粋しておく。
《韓国は古くから中国の属国だった。国を統治する王家はあったが、彼らは中国朝廷に朝貢し、外交政策は中国に指導を仰いでいた。》
《日本は韓国の「独立」という実にもっともな動機から、中国、そしてロシアと戦った。第二次世界大戦後の日本は、自分達は何のために戦ったか忘れてしまったかもしれないが、日本はとにかく当時の国際慣行を律儀に守り、それに促されて行動したのだ。日本外務省が韓国の「対外関係と対外問題」を「管理統括」し、 日本人の総督が韓国の首都で行政権限を与えられていたのはすべて、韓国政府と締結した条約にもとずくものである。》
さて、アベノミクスが「第三の矢」の段階に入っている。
安倍信三首相は、5月17日、「世界で勝つ」をキーワードとする成長戦略の第2弾を発表した。そのスピーチの中で「世界で勝てる日本人をつくる」と強調した。
この戦略の一環として、留学生向けの奨学金を充実させる。大学改革として、国立の8大学で今後3年で1500人程度を世界中の優秀な研究者に置き換え、外国人教員を倍増させる。そうして、今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校をランクインさせる。大学受験に「TOEFL」を導入するなどの政策が打ち出されている。
これぐらいでは不十分と思うが、今や日本人もグローバルに生きていかなければならない時代になったのは間違いない。私たちは、あらためて自分たちが何者なのかを自分自身に問わなければならないのだ。
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