LBOファイナンスの変調 −−「貸し手優位」の市場へ大変貌 既投資案件の評価に厳しい目
「LBOマーケットはあとどれくらいで回復するんだ?」
昨年末のこと。大手行のLBO(レバレッジド・バイ・アウト)ファイナンス担当幹部がニューヨークを訪れ、現地の投資銀行幹部に尋ねた。
「うまくいけば、第2四半期(4~6月)か」 振り返ってみると、当時はまだ楽観的なムードも残っていた。
「ところが、今聞くと、年内の回復は無理だという答えが返ってくる」
昨今の金融市場の混乱で、欧米LBOファイナンス市場は完全にシャットダウン。エクイティやメザニンの出し手の意欲はあっても、シニアの部分はまったく組成できない。シティグループやゴールドマン・サックスは数百億?単位のLBOローン在庫を抱えているとされ、その評価損計上がRMBSやCDOに続く次の焦点になっている。
ひるがえって、日本のLBO市場はどうか。
カーライル・グループのマネージングディレクター、山田和広氏は「LBOのデットマーケットは欧米並みに厳しくなっているのが現状。まず外銀のドアが閉まり、アクティブだった邦銀もだいぶん姿勢が厳しくなっている。1000億円を超える調達は難しくなっており、この状況は当分続きそうだ」と語る。
外銀は従来、引き受けたLBOローンの大半を投資家に売却。アップフロントフィーで稼ぐのが典型的なビジネスモデルだった。ところが、「LBOはモーゲージローンと同じ、リスクの高いローンとみられるようになった」(山田氏)。ローンを引き受ける地銀など投資家の数や許容度が小さくなり、シンジケーションのマーケット自体が小さくなっていることが響いている。
JPモルガン証券レバレッジドファイナンス部の宮地直紀部長も「われわれが邦銀と大きく違うのは、クレジットの見方の差というより、シンジケーションリスクの考え方」と話す。シンジケーションの売却先である邦銀の姿勢は変わらないが、アジアの金融機関は調達コストが上昇しているため、出せる金額、金利が「よりセレクティブになっている」(宮地氏)という。