LBOファイナンスの変調 −−「貸し手優位」の市場へ大変貌 既投資案件の評価に厳しい目
Interview
ペルミラ・アドバイザーズ社長 白石智哉
総額1850億円のファイナンスの特徴は、一つは通常のシニア、メザニンに加え、運転資金や追加買収資金として350億円のラインを組んだこと。資金使途を最初から決めないものを邦銀は貸したがらないが、こうしたファイナンスは日本であまり例がない。あと、円だけでなく、ドル、ユーロと3通貨で調達した。当社は日本の売上比率は15%しかなく、中長期的な成長を考えると、円のみの調達では為替リスクをヘッジできない。
サブプライム問題の影響がすでに出ていた時期だったが、資金調達はまったく問題がなかった。かなり早い段階から案件を精査し、ファイナンスのメドをつけていたことがポイントだった。買収価格もEBITDAに対する倍率でみても11倍に達しない程度。この会社は設備投資があまりなく、同業他社と比べても買収価格が非常に高いということはない。
サプライチェーンや資金調達など、国際企業として効率化しないといけない部分はまだある。一つのファンドで1・7兆円規模を持つわれわれにとって、1000億円投資は10%にも満たない。これまで当社は大きな買収をしたくても資金力がなかったが、今後はより大きなことができるだろう。(談)
Interview
今年は積極的に新規投資ができる年だ
カーライル・グループ日本共同代表 平野正雄
サブプライム問題はプライベートエクイティ業界に甚大な影響を与えている。レンダーの融資姿勢は厳しくなっており、キャパシティやデットの価格の面でもファイナンスは非常にタイトになっている。あまりに強気な価格にレンダーはついてこなくなっており、非常に大きなレバレッジはかけにくい。
カーライルとしては、2007年は1号ファンドの投資回収をかなり積極的にやってきた。一方、新規投資は(07年前半は)まだサブプライムの影響がほとんどなかった。ファンド同士の競争は熾烈だったが、ファイナンスも十分ついてきたので、かなり高額買収が目立っていた。当社はほとんどの案件を評価したが、適切な投資リターンを考えると、過剰な値付けでの価格競争に参入せず、あえて手控えていた。
ところが、07年の終盤から調達環境が変わり、過剰な値付けに資金の出し手がついてこない状況になった。値付けは健全化の方向にいき、実績のあるファンドに資金が回ってくる状況だ。本質的なカネ余りの状況はなくなったわけではなく、グローバル投資家の意欲は非常に高い。よい案件、ファンドなら資金を集めることは今でも難しくない。今年はむしろ積極的に新規投資できる年だととらえている。 (談)
Interview
KKRジャパン社長 蓑田秀策
東京にオフィスを開設してようやく2年になるが、まだ投資を実行していない。何をやっていたのか、ということだろうが、あまり焦らずやってきた。金融機関の方を含め、いろいろな方と会って話をしている。陣容やどういう投資をやっていくのがよいのかなど、試行錯誤をしていた。2007年は大きな転換の年だったが、日本のバイアウトは結論からいうとまったく影響を受けていない。東京はゆっくり投資スタンスを固めていこうと考えている。
日本の会社は全部身内で構成されており、説明責任が必要ない。これは世界で起こっている市場化とグローバル化という二つの流れとまったく相いれない。KKRのグローバルネットワークはものすごく使い勝手のよい存在になるはずだが、日本ではまだ必要とされていない。本当の意味でKKRが身内だとわかってもらうには時間がかかる。1件あたりのディールサイズの下限はないが、企業価値を上げるためにたとえば、アンカーシェアホールディング、安定株主投資みたいなものもやろうと思っている。ニーズもたくさんある。
オリコの案件はKKRの通常の投資パターンとは違う。一つの試みだ。東京拠点は始めたばかり。10年はいる。(談)
(金融ビジネス編集部)
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