「組織密度」と「組織熱量」で最強の中堅企業に 「体質」を誇る中規模の「城」が日本の競争力を高める

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中堅企業は「城」でなくてはならない。たとえ石高(こくだか)が大きくなくとも、働き者、知恵者の忠臣が支える個性溢れる「城」を目指さなければならない。「体格」ではなく、「体質」で戦うとはそういうことだ。

多くの大企業は見かけの石高は大きくても、その内実は汲々としている。大きな城は維持するのが容易ではなく、実は脆い。小さくとも、堅牢な「城」を数多く生み出すことが、日本の産業政策にとってとても重要なテーマなのだ。

それでは、規模が拡張してしまった大企業はどうすればよいのか。もちろん、トヨタ自動車のようにあれだけの「体格」を持ちながら、優れた「体質」を誇る会社は存在する。トヨタの真の強みは、世界一の自動車メーカーでありながら「城」の感覚を失っていないところにある。

残念ながら統治不能に陥ってしまった大企業は、「連邦経営」を目指すしかない。形だけのカンパニー制や事業部制などではなく、「城」として自主独立させ、それぞれの「城」は持ち味を活かした独自の繁栄を目指す。中途半端なシナジーなどを期待してはいけない。個性的な「城」が連なる「連邦経営」こそ、日本の大企業が目指すひとつの方向性である。

これまでの産業政策は、大企業と中小企業の議論に終始しがちであった。実は、日本のグローバル競争力を高める鍵は、「体質」を誇る中規模の「城」をどれだけ育てられるかにかかっているのである。
 

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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