9月の連邦議会選挙後も、ドイツはユーロの一員 独有力経済人に聞く欧州債務危機
イタリア、フランスの政治に懸念
――前回の2012年10月のインタビューでは、「ユーロ圏が健全性を取り戻す確率は85%程度」と話していました。
最近はややネガティブな見方に変わり、その確率は60~65%へ下がっている。おもに経済ではなく、政治面の理由によるものだ。気になるのはイタリア、フランス両国の動向だ。
イタリア経済は政府債務が高水準で推移。対国内総生産(GDP)比で125~136%の水準に達している。
絶対額は約21億ユーロ。ドイツの対外債務に匹敵する金額だ。今年の対財政赤字も対GDP比で約2.9%に達する見通し。生産性も低下し、単位労働コストは上昇。こうした中での最近の政局混迷は気掛かりだ。
フランス経済も厳しい。13年はマイナス成長と見ている。財政赤字の対GDP比は12年がマイナス4.8%。13年の予測はマイナス3.8%だ。続く14年もマイナス幅が3%を超える見込み。足元の失業率は約11%と、過去15年で最も高い水準になった。320万人あまりが職を失ってしまった。
社会党出身の大統領就任で、政策にも矛盾が生じてきた。オランド大統領は財政赤字を減らすと約束したが、実際には支出が増大し、赤字が膨らんでいる。
それなのに、家族手当などを増やす方向だ。企業の税負担を軽減すると宣言したが、一方で富裕層には増税。結局は企業にも増税の矛先が向けられようとしている。フランスだけでなく欧州、ひいては世界中の市場が一貫性のないチグハグな政策によって混乱している。経済改革とともに、政治システム改革も行う能力があるのか。フランス政府の信頼性が問われている。
海外の銀行へ税金逃れの隠し口座を持っていたのでは、とする疑惑の発覚で、カユザック前予算相が辞任に追い込まれるなどして、オランド大統領自身に対する信頼も低下している。
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