「組織密度」と「組織熱量」で最強の中堅企業に 「体質」を誇る中規模の「城」が日本の競争力を高める

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不振に喘ぐ大手電機メーカーに代表されるように、「巨艦」の凋落が日本の凋落のように喧伝されるが、日本の産業基盤はそれほど柔ではない。「体格」では劣るものの、「体質」に優れた高性能の「駆逐艦」「巡洋艦」こそが日本の産業を支えている。日本電子や島精機製作所の例からも分かるように、日本独自の技術開発や日本ならではのイノベーションも、実は中堅企業から生まれているケースが多いのだ。

高い「組織密度」によって“ひとつの塊”として動く

卓越した業績を上げている中堅企業をつぶさに見ていくと、そこには2つの共通点を見出すことができる。

ひとつ目は、「組織密度」がきわめて濃密なことである。組織の階層間、部門間の隙間が小さく、組織が“ひとつの塊”として動くことができる。経営陣の方針が瞬く間に中間管理職、現場に伝わり、全社一丸の状態をつくることができるのが、優良中堅企業の大きな特徴であり、競争上の優位性につながっている。

一方、多くの大企業はその規模故に「組織密度」が粗く、一体感をつくり出すのはきわめて難しい。知らぬ間に組織の壁ができてしまい、“ひとつの塊”として動くことが容易ではない。「体格」が「体質」の劣化につながってしまっている。

その象徴的なものが、「社長と現場の距離」である。大企業では社長は常に「雲の上の人」である。ほとんどの職場では、社長を見かけることや直接話すことなど滅多にない。多くの大組織の社長陣は、「それではいけない」と危機感を持って、社長が現場巡りを行う「社長キャラバン」などを企画する。もちろん、こうした工夫も「ないよりあったほうがよい」が、所詮現場にとって社長は「非日常」である。

しかし、優良中堅企業では社長は現場にとってとても近い存在であり、社長にとっても現場は身近な「日常」である。この距離感の近さは、チームや組織で動くことを暗黙の信条とする日本企業にとってとても大切だ。

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