圧勝ムード!?高転びもありうる安倍首相 「改憲首相」路線は国民に響くのか

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内閣支持率は最初、高水準だったが、年を越したあたりで下落し、4~5月に一度は持ち直したものの、6月初めに30%台半ばまで急落、そのまま参院選大敗で短命政権に、というのが第1次安倍内閣の展開だった。

「2度目」の安倍首相が現在、「第1次内閣の失敗の教訓」を肝に銘じているのは疑いない。前回は就任の10ヵ月後、今回は7ヵ月後だが、参院選が大きな関門という事情は同じだ。今回も勝てなければ短命で終わりそうだ。

だが、第2次安倍内閣は発足から4ヵ月余が過ぎたが、いまも高支持率を維持している。5月2日発表の朝日新聞の調査では、去年12月の内閣発足直後の59%を上回る66%を記録した。

とはいえ、第1次内閣のような「6月初めに急落」も、ないわけではない。

今回はアベノミクスが奏効して経済好調だから大丈夫という見方が強いが、実は07年も景気は長期拡大中だった。前回は郵政造反組復党、年金問題、閣僚の疑惑や失言などに加え、改憲構想の争点化を目指したのも影響した。

安倍首相は07年1月に「参院選でも改憲を訴えたい」と宣言したが、今回も改正手続を定めた憲法第96条の先行改正構想を早々に打ち出し、5月1日には外遊先で「参院選でも公約に」と明言した。ところが、「第1次内閣の失敗の教訓」を思い出したのか、10日のフジテレビの番組では、一転して96条の改正について「国民的な議論が深まっているとはいえない」と慎重姿勢を示し始めた。

現状では参院選は自民党圧勝ムードだが、高支持率で図に乗って「改憲首相」で突っ走ると、高転びして「支持率急落、参院選苦戦」という前轍を踏む危険性がある。安倍首相がそこに注意を払って「低い重心」を心がけるなら、「失敗の教訓」が生きるはずだ。

現在の高支持率は、アベノミクスの成果だけでなく、「再挑戦する失敗首相」への国民の応援歌も背景にある。首相が「『低迷日本』に苦しんできた多くの国民との意識の共有」を忘れ、野望達成を目指す権力者の顔を見せ始めると、高転びが現実となるだろう。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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