TPP参加なら、輸出よりも輸入が増える 日本の経済成長には、内需がとても大切

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TPPの経済効果に関する政府試算は、TPPへの参加で日本経済が拡大するのは、海外の需要を国内に取り込むことができるからではなくて、日本国内の需要である消費が増加するからだ、ということを示している。

TPPに参加しても、結局、重要なのは内需の拡大

今後人口が減少していく日本経済では需要の増加は期待できないので、海外への輸出を拡大する以外に発展の道はないと言う主張をよく聞く。しかし、我々は、日本国内でこれまで以上に多くの物を使用し、サービスを利用したいから、もっと所得が欲しいのだ。

花見酒のGDPの計算を見れば、日本経済を拡大させるために貿易黒字の拡大が不可欠というわけではないことが分かる。落語の花見酒で二人が犯した失敗は、自分達が運んでいる酒を飲んだことではなく、次の仕入れを行うだけのお金をちゃんと残しておかなかったことだ。

輸入に必要な資金を賄うだけ、輸出や海外投資で稼ぐ必要はあるが、国内消費を増やさなければ日本に住む人たちの生活は改善しない。日本が国際的な取引で稼いだお金は、最終的には海外から物やサービスを買うために支払う以外に、他に使い道は無いのである。

内需が拡大しなくてもTPPに参加すれば日本経済が発展する、ということはない。TPPに参加しても、結局、重要なのは内需の拡大だということを、政府試算は示している。
 

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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