成長戦略の検討を行っている政府の産業競争力会議は、6月5日の会議で素案を提示した。その中で、今後10年間の平均で名目GDP成長率3%程度という目標だけではなく、「一人当たり国民総所得」を今後10年間で150万円増加させることを目標として示した。
GDPよりもGNIを目標にしたほうが達成しやすい
各国の経済活動を測る指標としては、国内総生産(GDP)が使われることが多い。日本でも景気動向で注目されるのは、四半期ごとに発表される実質GDPの成長率だ。だが、1990年代の初め頃までは、国民総生産(GNP)が代表的な指標だった。
今回、政府が政策の指標に取り上げた国民総所得(GNI)は、実質では若干異なるものの名目では国民総生産(GNP)に等しい。なぜ国内総生産ではなく再び国民総所得が政策の目標となったのだろうか?
高度成長期に、池田内閣は有名な「所得倍増計画」を策定し、名目国民総生産(=国民総所得)を5年間で倍増することを目標とした。どうやら、本当は月給倍増とか賃金倍増ということを前面に出したかったようだ。しかし、これは個々の企業が決めることだから国が掲げる経済政策の目標としては適切とは言い難いので、結局国民所得を倍増するという目標になったらしい。
所得が増えることは誰しもが望んでいることだから、言葉の響きが心地よい。「日本経済全体が毎年3%成長する」というより、「10年後には一人当たり150万円所得が増える」という方が分かりやすいことも、今回一人当たり国民総所得が目標として採用されることになった要因の一つであっただろう。
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