5月28日、安倍内閣は経済財政諮問会議を開き、「骨太の方針」の目次案を示して検討の開始を指示した。
2001~09年、自民党政権は毎年6月に経済財政運営と構造改革に関する基本方針を示してきた。「骨太の方針」と呼ばれたが、それが4年ぶりに復活する。
アベノミクスは金融緩和が入り口だったが、成否は「第3の矢」の成長戦略がカギとなる。安倍内閣は「骨太」でその具体策を示す方針だが、最大の敵は霞が関だ。成長戦略は規制改革が柱になるが、中央府省が握る権限と省益の壁を崩せるかどうか。
安倍首相は第一次内閣時代、官僚改革に挑み、「自爆テロ」といわれた決死の抵抗に遭って、結果、短命政権に終わった。それが骨身にこたえたのか、第二次内閣では霞が関との協調・連携を心がけているように映るが、「骨太」推進の段階になれば、再び霞が関との戦いとなる。
一方、安倍首相は憲法改正に意欲的だ。出発点は「祖父・岸元首相の遺志」と見て間違いない。岸氏の長女で首相の母の安倍洋子さんは息子を「政策は祖父似、性格は父似」と評しているが、安倍首相が描く政治モデルは「岸政治」だろう。岸氏は歴史上、日米安保条約改定実現で知られるが、商工省(現経済産業省)出身の元統制派エース官僚だったこともあって、在任中の政権運営では、当時の大蔵省と一体だった初期の池田蔵相(後に首相)とともに、政官一体の政治・行政を強力に推し進めた。
自民党発足後の初の長期政権となった岸内閣は、戦前の国家統制時代に確立した官僚主導体制を復活させた。言ってみれば、現在まで根強く続く戦後型の官僚主導・官僚依存政治は岸政治が産みの親だった。
安倍首相が今後、成長戦略に基づく規制改革や公務員制度改革に本気で取り組むなら、「祖父の遺産」崩しへの挑戦となるが、「祖父似」の首相にそれができるかどうか。
岸氏は首相在任中、機略縦横、変幻自在の舵取りを行い、「両岸」と揶揄された一面があったが、安倍首相がもし国民世論と霞が関の壁の狭間で右往左往すれば、アベノミクスでなく、「アベコベノミクス」と酷評を浴びるだろう。この先は首相の本気度が問われる。
(撮影:尾形文繁)
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