輸出をするのは輸入代金を稼ぐため
「天然資源に恵まれない我が国は、輸出をしなくては経済が成り立たない」と我々は教わってきた。しかし、それは輸出をすること自体が目的であるわけではない。日本人の生活を豊かにするための様々なものを輸入する代金を支払うためには、輸出でお金を稼がなくてはならないという意味だ。
花見酒の二人組の失敗は、酒を半分花見客に売って酒の仕入れを続けるだけのお金を稼がなかったことにある。前頁の表の(3)のように、原材料となる酒の購入代金分だけ花見客に売ってお金を稼ぎ、あとは二人が自分で酒を飲んでしまうというやり方をすれば、全く問題は無かったはずなのだ。
(1)のように、輸出を増やしてGDPを拡大するだけでは日本人の生活は豊かにならない。酒屋から酒を輸入して国内で加工し花見客に売るという輸出活動の規模を2倍に拡大すれば、GDPは2倍になる。しかし、これでは二人は2倍働いてくたびれるだけで酒は一滴も飲めないのだから、より幸せになってはいないだろう。
一方、表の(3)の方法を2回くりかえしてもGDPはちゃんと2倍に拡大し、しかも飲める酒の量も2倍になる。もっと酒が飲みたければ、二人はこれを何回も繰り返せば良い。
「天然資源に恵まれない我が国は、輸出をしなくては経済が成り立たない」という言葉は、実は正確ではなく、「天然資源に恵まれない我が国は、『輸入』をしなくては経済が成り立たない。そのためには輸出をしなくてはならない」というのが正しいのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら