「SMAP解散」に見えた芸能人という名の労働者

それでも彼らがもたらしたものは失われない

矢野:一連の騒動で考えなくてはいけないのは、芸能人は労働者であるということです。野暮な問題提起ですが、でも、そこは向き合うべきでしょう。ただ一方で、芸能は日常の労働から離れたい人のためにあります。芸能である以上、ロマンは守ってほしいとも思う。最近の女性アイドルが個人的に苦手なのは、彼女たちを労働者としてしか見られないからかもしれません。

あの謝罪映像で、「会社の嫌なことを思い出しちゃったよ」とネットで言われていたことが印象的でした。SMAPでさえも頭を下げなければいけない。会社や学校のことを忘れたくて、彼らの歌っている姿を見に行くわけでしょう。行った先で、また会社の嫌なことを思い出させるのは、芸能として最悪ですよ。

常見:私はバンドの解散でありがちな「音楽性の不一致」という嘘をつかれたほうがまだいいと思いました。過去のインタビューで「音楽的ルーツも違う、バラバラの個性がぶつかり合うのが俺たち」とか言っている奴らがそんなことを言う(笑)。でも、そういう矛盾があってもいいじゃないですか。たとえ、普段は生活が苦しくてアルバイトをしていても、ステージ上ではかっこよくいてほしい。

矢野:でも、きれいであってほしい、という願望のあり方も正直悩みどころです。たとえば、SMAPには仲良くいてほしい、もしくは仲が悪くてもプロフェッショナルとして表には出さないでいてほしい、と願う。でも、当然のことながら「嫌なら辞めていいよ」とも言えます。

「仲良くいてほしい」「きれいでいてほしい」という欲望のあり方を肯定していいのか。自分の中で引き裂かれる気持ちはあります。

必ずきっといつも通りに

常見:この本はSMAPのメンバーに読んでもらいたいですか?

矢野:特に、中居(正広)君と木村(拓哉)君に捧げたい。彼らに媚びを売るつもりはないのですが、文芸批評がバックボーンなので、パフォーマーの天才が自分で気づかずにやってしまっていることを言葉にしたいと思っています。自分たちがやってきたことは歴史的に続くのだ、ということを本人たちに伝えたい。

あと、僕は爆笑問題のファンで、実は太田光さんにもこの本を送っています。太田さんは、昔ながらの芸能のラインをギリギリで保ちつつ、それを予定調和にせず、そこに自由さを持ち込んでいる人です。彼はSMAPに対して思い入れが強い。SMAPの「Triangle」が出た時に、太田さんが絶賛している。それは、SMAPが日本をそこまで背負ったことに対する評価だと思うんです。

謝罪映像でみんなが「会社の嫌なこと思い出したよ」と言っている時に、太田さんは1人だけ、「木村拓哉かっこよかったもん。昨日もちょっと口をこう(キュっと)やるあたりが、この野郎、やっぱここでもかっこよくいうなぁとかさ、思ったもん」と言った。そういう褒め方をした。芸能への覚悟の決まり方、そこへの視線の注ぎ方を見ていたんですね。

常見:あの謝罪映像を見ても、SMAPのロマンを感じていたんですね。

矢野:あんな事態であったとしても、5人は芸能人としての魅力があったと。だから、社会のしがらみに巻き込まれたSMAPがグループとして解散してしまったとしても、SMAPがもたらしたものは失われないと僕は考えています。

(構成・写真:山本 ぽてと)

SMAPはいまどき「国民的」なる十字架を背負わされていた。彼らの終わりを通じて、みんなが手をつなげる時代が本当に終わってしまうのだと感じてしまった。
いまだに「昭和が終わった」などという表現が普通に使われる。2年前に、高倉健や菅原文太が亡くなった時にもこの言葉がよく使われた。今年で戦後71年、換算すると昭和91年であるにもかかわらずである。未だに私たちは昭和の呪縛から逃れることができない。
しかし、そんな昭和の憧憬のもと進んでいった平成もSMAP解散と、天皇の生前退位により幕引きが行われようとしている(もし、生前退位したとしても、元号が変わるのかどうかはまだ諸説あるが)。
この解散劇を皆さんはどう捉えるか?
明日(10月10日)配信の次回もお楽しみに!

 

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