常見:SMAP解散のとき「国民的」という言葉が出ましたよね。これだけ、社会が分断、断絶している中で、「国民的」を背負わされている。しかも、もともと等身大で個性派だと言われていたグループだったはずなのに。
矢野:だから、天皇陛下に重ねる気持ちはわからなくないです。国民の統合の象徴がSMAPで天皇だった。解散と生前退位の表明が同時期に出てきたのは、巡り合わせですよね。
常見:みんながひとつになれるものって、スポーツの世界大会や、震災のような大きな事件があった時です。その中で、確かに共通の話題になりえたのはSMAPだと思います。SMAPが国民的アイドルになったのはいつからなのでしょうか?
あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ…
矢野:初めてミリオンセラーを取ったのは、「夜空ノムコウ」ですね。そこでは、「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ…」と、何も信じられない時代を歌いました。それが、いわゆるロスジェネの空気感を表現していたとも言われます。
常見:まさに僕はロスジェネなので、「夜空ノムコウ」は自分のライフヒストリーと重なっています。社会人になった1997年に、山一證券と北海道拓殖銀行が経営破たんしました。新人営業マンとして成績がふるわなかった時期でした。年が明けた1998年、「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ…」という一節を聴いて涙した……(笑)。ロスジェネのテーマソングになっていますよね。
でも、「世界に一つだけの花」はまったくノレなかったんです。その時のSMAPはビッグだったし、当時はホリエモン(堀江貴文さん)や藤田晋さんのような、同世代のスターも出てきていた。努力は否定できないけれど、頑張っても報われないことに気がついてしまう。そこで「No.1にならなくてもいい もともと特別な Only one」と歌われても、「Only oneってそもそもNo.1だろうが!」と思って。
矢野:僕自身は「世界に一つだけの花」の時に、ちょうど就活を意識する時期を迎えていました。僕はのんきに大学院進学を考えていたのですが、周りはどういうふうに自己PRを作っていくのか?というモードになっている。周囲のそういう雰囲気はNO.1競争をさせられているように見えてつらかった。そこに響く感じはありました。
常見:日本人の思い出の中に、SMAPの曲は刻み込まれているんでしょうね。最近のSMAPはどうですか?
矢野:ここ数年は違った意味でSMAPらしさを取り戻していたので、これからが楽しみでした。最新の『Mr.S』(2014)なんて音楽的にも良かった。最近は、米国の音楽がちょっとしたディスコブームであり、SMAPがそこに戻っていて面白い。これまでの時代はリズムの譜割が細かくて、SMAPは対応できていなかった。逆にKAT-TUNなんかはそのあたりの音楽が面白いのですが。楽曲提供でも、実力派ミュージシャンがしのぎを削っています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら