新生ヤフーが命運託す、生粋"モバイル野郎" ソフトバンク孫社長も待望した男の素顔

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「村上はどこに行った?」(井上、孫)

ヤフー入社後、2006年に親会社のソフトバンクが携帯電話会社のボーダフォンを買収した際には、ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)に出向。さらに、ソフトバンクのモバイルポータルサイト「Yahoo!ケータイ」の開発にも従事するなど、一貫してモバイルの仕事に携わった。

ところが、そこで村上が見たのは、ヤフーではあくまでPCが本流であり、モバイルは亜流だという厳然たる事実だった。

「与えられた範囲で成果を出すのが、仕事というもの。でも、(開発の)途中途中で(本流の)PC部門に人手を取られてしまう。現場の一部長として、どんなにモバイル化の必要性を役員に訴えても、のらりくらりとかわされるばかり。じゃあ、いいタイミングだから、一度外に出てみようと思ったんです」

ヤフーを辞め、ベンチャーを興すと決めた村上を、経営陣は引き留めようとしていた。当時、社長の井上は4時間かけて「起業よりも、何千人でやるプロジェクトのほうが魅力的だろう」と諭した。孫は、「約200社あるソフトバンクグループの子会社、どこでも行っていいから」と破格の条件を提示したという。

ところが、村上は「(写真共有サービスの)インスタグラムもたった数人のチームだったのに、フェイスブックが巨額で買収したじゃないですか」と言い放った。

しかし、運命はわからないものだ。ヤフーが新体制になるにあたって開かれた、ヤフー前社長の井上正博、ソフトバンク社長孫正義、現社長宮坂(当時、執行役員コンシューマ事業統括本部長)による3者会議。そこで井上、孫が口をそろえた。「村上はどこにいったんだ?」。

スマホに根差したサービスを作れるか

新体制となったヤフーについて、村上は「従来とはまったく違う」と言う。

スマホをかたどったパネルから顔をのぞかせる村上。「現場目線」で動けるのが、新生ヤフー経営陣の特徴だ

「今の爆速体制では、現場の一部長だった人間がひとっ飛びに執行役員になっている。僕らは、一部長として苦労した部分を、肌身で知っている。

何が大事で、何がナンセンスなのか。経営の目線で正しいこと、部長の目線で正しいこと、両方がわかるのが、今のヤフー経営陣の多様性、強みになっている」

新生ヤフーの滑り出しは、上々だ。今年度(2013年3月期)は16期連続増収増益を達成し、6期ぶりに売上高から最終利益までの二ケタ成長を遂げた。村上率いるスマホの分野でも、ページビューや広告収入は順調に拡大しており、初年度としては上出来だった。

しかし、村上はこの状況に満足していない。

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