「僕の仕事は、実際はCTO(チーフ・テクニカル・オフィサー)に近い。全てを自分たちでやるわけではなく、テコをかけていく役割。ヤフーニュースやオークションなどを『こういう風にするモバイル化するといい』と、提案している」
社長直下のCMO室には、村上のサポートメンバーとして、社内でも技術面に強いハッカーたちを10名ほど取りそろえている。今年4月には「アプリ開発室」も新設し、スマホ向けアプリの開発にさらに本腰を入れ始めた。
村上には「日本でもエンジニアの地位を高めなければならない」という問題意識がある。村上はこう語る。
「世界の“イケている”IT企業のファウンダーは、大抵がエンジニアです。シリコンバレーのスタートアップは、大抵そう。何か(サービスを)作って、当たって、ある程度成長すると、『以前、AOLで活躍していました』みたいな、シニアマネジメントを招く。現場でものを作っている人が、すごく大事にされているんです」
ところが、日本のエンジニアたちを取り巻く環境はまるで違う。日本のソフトウエア業界では、設計部分を担うSI(システムインテグレーター)が中心的存在として君臨する。一方、実際に現場でものを作るプログラマーというと、下請けや孫請け扱い。村上は、それを「建設業界と同じゼネコンモデル」と表現する。
しかし今は、現場からのスモールスタートがカギを握る時代。上流の「設計」と下流の「製造」という“主従関係”では、スピード感も競争力も保てない。
その問題意識の下、旧来型の上下関係を打破するための活動に、村上は力を入れる。
ヤフーには“われこそは”と思う社員たちがITに関するオリジナルなアイデアを披露するイベントがある。ひとつは「ハックデー」で、24時間以内にプロダクト化を目指せる作品の原型作りに社員が取り組む。従来から存在していたが、村上がCTOに就任して以降、より頻繁に開かれるようになった。
もうひとつは新体制後に生まれた「ハッカソン」。被災地が抱える課題を解決するなど、社会的課題を解決する方法を生み出す、ハックデーよりも実際的なイベントだ。
「社員同士がラインを超えて、人となりを知る。そうして、社内のネットワークが強くなる。全体的な技術力の底上げになる」(村上)
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