ランナーに大ヒットした機能性タイツの真実 その関節サポートでは「疲労回復」できない

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問題は、その血が心臓へ帰ってくるとき。酸素が含まれた血は一度末端まで送られ、酸素が使われた後、二酸化炭素や老廃物を持って心臓まで戻らないといけません。これが静脈の役割です。

しかし、静脈は低い地点から心臓まで血を押し上げる必要が出てきます。それができないと老廃物が残ったり、赤血球が停滞して酸素不足に陥ったりします。

これを防止するため、血管には静脈弁がついており、動いて血液を上げる仕組みになっています。ただし、ここでカギとなるのが筋肉の収縮。静脈弁は筋肉の収縮によって動くため、もしマラソン中に筋肉が炎症を起こし、収縮が鈍ってくると、連動して弁の動きも弱くなりうまく老廃物や二酸化炭素を持って帰ることが出来なくなります。こうして疲労がたまるのです。

疲労回復としてトレーナーが行う措置に、エレベーションというものがあります。選手をあおむけに寝かせて、足を心臓より高い位置に固定するものですが、これも静脈の本来の役割である老廃物や二酸化炭素を心臓まで送り届けるという狙いを含んでいます。心臓より高い位置に患部をおけば血は戻りやすいですから。

下半身の機能性インナーは、まさにこの「老廃物や二酸化炭素の停滞」を防ぐためのもの。着圧で足の筋肉全体を締めて刺激。収縮を促進して、静脈血が余計な場所に寄り道しないように、停滞せずきちんと心臓へ上がれるようにします。何も着ていなければ、どうしても疲労箇所に血がたまりやすくなりますから。

特にマラソンやランニングは、「休憩を挟まず同じ動きを繰り返す特殊なスポーツ」です。数十分から数時間、同じ姿勢と動作を継続しなければなりません。それは、同じ筋肉、同じポイントを局所的に酷使することとなります。きわめて筋肉が炎症しやすいスポーツといえるでしょう。それを避けるために、下半身の機能性インナーは非常に有効です。

今の主流インナーを着用しても、疲労は回復しない?

下半身の機能性インナーは疲労回復に有効ですが、どの商品でもそれがかなうとは言えません。現在主流となっている機能性インナーは、筋肉ではなく、関節に着圧をかける「関節サポート系」のもの。タイツの膝関節部分にテーピングのような縫い目を施して固定感を増すなど、「テーピング理論」を用いたものが多いですね。

しかし、関節サポート系の商品は、上で述べた疲労回復とは結びつきにくいのです。関節に圧をかけるのが主ですから、先ほど述べた「足の“筋肉”全体を締めて刺激。収縮を促進して、静脈血が余計な場所に寄り道しないようにする」というアプローチとは異なるんです。どちらも「圧をかける」という着地点ですが、その目的はまったく違うんですね。

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