ランナーに大ヒットした機能性タイツの真実 その関節サポートでは「疲労回復」できない

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関節サポートの目的は、ランニング時のバランス維持です。片足が着地する瞬間はどうしても不安定になります。このときランナーは、足の関節を使って下半身でバランスを取らなければいけません。そこでテーピング理論をもとにインナーで関節を固定。バランスを取りやすくするという原理です。

つまり、関節サポートはあくまでバランス安定であって、筋肉疲労を防ぐものではないのです。これを勘違いすると、疲労回復の目的でインナーを着用したのに、一向に改善されないということになります。

また、関節サポートによりケガを防げると考える人も多いですが、関節の固定とケガは必ずしも結びつきません。「ケガ=関節」というイメージが強いので、その部分を直接固定するのが効果的と思いがちですが、そういったケガも筋肉疲労が原因で起きるケースは少なくないのです。

ちなみに、ランニングタイツの中には関節サポートと筋肉サポートの両立を打ち出した商品もあります。しかし、それは構造上簡単ではないはず。実際は、関節サポートに偏っているのではないでしょうか。理由は後述しますが、疲労回復を望む場合は、筋肉サポートのランニングタイツを選ぶのが良いと考えています。

ではなぜ、市場で関節サポートの商品が主流となっているのでしょうか。それはやはり、「ケガ=関節」といったイメージが強いからかもしれません。また、関節サポートでバランスを安定させると、顕著に走りやすさを感じます。そのため、まだ筋肉が付ききっていないビギナーの方などは、関節サポートのメリットを実感しやすいともいえます。ただし長い目で見れば、自分の筋力でバランスを取れるように鍛えないと、ケガをしにくい体になっていかないでしょう。

実は「弱圧」の方が疲れない?

ランナーの疲労回復には下半身の機能性インナーがよく、さらに関節ではなく筋肉に圧をかける筋肉サポート系のものがベスト。その上で「圧」の強さも問題で、とにかく強い圧力をかける「強圧」のインナーが良いとは限りません。

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(出所)デサントスポーツ科学 Vol.37

それを証明する論文があります。立命館大学の研究で、健康な男性8名に圧力が異なる3種類のコンプレッション(機能性)タイツを履かせて運動を行いました。使用したタイツの圧力は、強圧(約40hPa)、弱圧(約20hPa)、着圧を施さない(10hPa以下)の3種類です。

それぞれのタイツを履いて運動した直後に、垂直跳びや跳躍をすると、弱圧のタイツを履いていた際の数値が強圧に対して有意に高値を示したといいます。さらに、運動中の心拍数の平均値も、弱圧タイツがもっとも低値であり、疲労にかかわる血液中の血漿(けっしょう)インターロイキンという数値も上昇が少なかったようです。

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