「親が子供の大学の入学式に付いて行くなんてどうかしている」と、娘の入学式前に、友人たちから揶揄された。
当時も今も、日本では、大学の入学式に親が付いて行くことは批判される。入学式に親が付いて行くのは「過保護」であり、子は親離れ、親は子離れするべきだというのだ。
しかし、アメリカのリベラルアーツカレッジでは、コンヴァケーション(入学式)のある週には、必ず親がやって来る。この入学ウィークに親が来ないとなると、なによりも子どもの肩身が狭くなる。これは、留学生の親とて例外ではなく、ヨーロッパ、中東、アジア、アフリカからも親たちは来ていた。
アメリカの大学では、ほとんどの学生がオンキャンパス(学内)で暮らす。学内にある寮(ハウス)に入り、そこでほかの学生たちと共同生活するというのが普通だ。だから、生活に必要なものをそろえる必要があり、その面倒を見るためにも親は付いて行く。
さらに、入学ウィークには新入生向けのオリエンテーションがあり、その合間に、親と大学職員や教授たちが親交を深めるパーティも開かれる。それ以外にも、親と子供向けのさまざまな行事がある。
そのため、1週間近くも大学で過ごす親もいる。私と妻もそうした。大学近くのモーテルに泊まり、毎日、キャンパスに通った。
究極の少人数制授業
リベラルアーツカレッジがいいのは、なによりも少人数で、学生同士、教職員と学生、また親同士もみな親しくつき合え、その中で、子どもたちが育っていくことだろう。たいていのリベラルアーツカレッジでは、学生と教師の比率が20対1以下、中には5対1というところもある。日本のようなマンモス授業は皆無だ。
また、学生たちは、前記したようにオンキャンパスで暮らすので、共同生活の中で社会秩序や規律も学ぶ。
当時のことを思い出して、娘に何がよかったかと聞くと、「やはり、いい友達が世界中にできたこと。それぞれの文化の違いを知って、世界と日本がよりよくわかったこと」と言う。
ただ、そう言いながらも、「もう二度と、あんなに勉強したくない」と言う。「ほとんど寝ないで、朝までエッセイを書いていたことが何度あったかわからない」そうだ。
娘が入学した当時、日本からの留学生は娘を含めて5人だった。ベイツ・カレッジの場合、1学年の学生数は400人程度だから、1学年に5人は多いほうだった。しかし、今や、日本人留学生は毎年1人か2人に減り、中にはまったくいない年もある。
その代わり、1990年代はほとんどいなかった中国人留学生が増えている。
娘は在学中、アジア人でつくる文化交流クラブに入り、そこで、ベトナム、ミャンマー、タイ、中国、韓国などからの留学生と親しく交流した。
そして、2年時(ソフォモア)の後半を「海外授業」(スタディアブロード)で、中国の南京大学で過ごした。このとき、中国語を学んだので、やがてジョンズホプキンズ大学のSAIS大学院で、再び南京大学に行くことになる。
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