“日本化”する、90年代生まれの中国男子 日本の「ゆとり社員」とそっくりな新人類

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最近、夕方になると、上海のオフィスビルの前にはアウディ、ベンツ、フォルクスワーゲンなどの高級外車がずらりと並んでいます。私はデートのためにお金持ちの男性が女性を迎えに来ているのかと思いましたが、よく見てみると、90後の親たちが子どもを迎えに来ているのでした。別に帰り道が危険なわけでも何でもありません。かわいい子どもを早く保護したい一心なのです。

中国はもともと儒教の影響で、親は子どもの面倒をきちんと見て、子どもも親を大切にするという文化がありますが、それにしても、社会人になった子どものお迎えは少々度が過ぎているように私は思います。

EQに作用する粉ミルクが人気

もうひとつの背景には、親たちが教育方針を変えてきている影響も大きいと思います。私の子どもの頃はとにかく貧しかったので、「一生懸命勉強して、いい大学に入って、いい仕事をして、いい暮らしをしなさい」と教えられましたが、今はすでにおカネがあります。だから、「おカネではなく、豊かな人生を送ってほしい」と親が願うようになっている。これも、詰め込み教育からゆとり教育に変わっていった日本と同じ流れが起きています。

私の友人が幼児教育の教室を運営していますが、最近のお母さんたちには、知育系よりもクリエーティブ系や性格形成系のレッスンの人気が高いそうです。「IQを上げる」よりも「お絵かきをして創造力を上げる」「忍耐強くなる」「集中力を高める」といった教育が流行っている。

その変化は粉ミルクにも現れています。中国の企業の多くは、最大で4カ月の産休しか取得できないので、働くお母さんの子どもは粉ミルクを飲むのが必須です。粉ミルクを販売している会社は、どんな“成分”が入っているかを宣伝するわけですが、最近の高級粉ミルクは「うちはIQだけでなく、EQ(Emotional Intelligence Quantity、心の知能指数)にも作用する要素が入っている」とうたっています。

高等教育の面でも私の時代に比べて、選択肢の幅がずいぶんと広がっています。今も受験戦争はありますが、推薦入試やAO入試も増えてきているし、専門学校に行ってアート系の分野を学ぶのもすばらしいじゃないかという価値観が生まれている。外国に留学したっていい。ガリ勉で上に行ける人はガリ勉を続ければいいけれども、それができない人にも道がちゃんとある。そういうふうに変わってきています。

聞くところによると、上海の4大重点高校(上海中学、復旦付属、華師第二付属、交大付属)に通う高校生のうち、一般的な大学受験を受けるのはたった27%で、そのほかの生徒は海外の大学へ進学、もしくは推薦などで国内重点大学へ進学しているそうです。

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