“日本化”する、90年代生まれの中国男子 日本の「ゆとり社員」とそっくりな新人類

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では、なぜ90後の生態は80後のそれと比較して、これほどまで異なるのでしょうか。

それを理解していただくには、まず80後が育ってきた社会環境を少し紹介させて下さい。私を含め、80後の人は、文化大革命(1966~1976年)の頃に青春期をおくった世代の親に育てられました。中国は、文化大革命(以下、文革)によって世代が大きく変化しています。文革の約10年間は大学受験がありませんでした。受験が再開したとき、大学生が1人もおらず、あらゆる組織が人材難だったので、半年で2回も大学受験を行いました。私の両親は初回の受験で合格しています。文革後初期に大学に合格した人たちが、中国の改革開放をリードしてきました。

親世代の40代前半は、最もおカネを持っている

私の子どもの頃はまだ貧しくて、親が卵などは買えなかったと記憶しています。自宅に電話を取り付けると、同じマンション内で電話があるのは私の家だけだったので、マンションの住人が皆、借りに来て、うちの電話が公衆電話化しました。

私が6歳のときに日本に来てビックリしたのが、粗大ゴミ置き場にテレビが大量に捨てられていたことです。中国ではテレビが普及し始めたばかりでしたから、「なんでここにテレビが置いてあるのだろう。もらっていいのかな?」と思ったものです。

しかし、私が高校生ぐらいになると、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、自動車がどんどん普及し始めました。万元戸(資産が100万元以上ある世帯)という言葉も、万元戸が普通になりすぎて死語となり、友達の家族を見渡しても家族に誰か1人は海外で暮らしていたりします。80後は貧しい時代と豊かな時代を両方、経験しています。そのせいか、豊かな時代になってもおカネを浪費してはいけないという価値観が刷り込まれています。

なので、80後以前の世代は、おカネや仕事に対してガツガツしています。おカネをたくさん稼いで家を買いたい、いい仕事について、いい暮らしがしたいという欲求がとても強い。

それが、90後になると、経済成長期とバブルしか経験していないので、おカネに対して執着しません。90後が育った時代は、1987年に始まった改革開放政策が沿岸地区に広く展開され、資本主義の仕組みが次々と中国社会に定着しました。90後が物心ついた2000年代以降は、パソコン、薄型テレビ、携帯電話などが爆発的に普及しました。また、90後の親たちは現在40代前半の人が中心で、中国で今、いちばんおカネを持っている世代です。さらに子どもは一人っ子。一人っ子政策以後に生まれた子どもを「小皇帝」と呼んだりしますが、まさに富裕層がただ一人の小さな皇帝に資産をどんどんつぎ込んでいます。

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