異次元金融緩和で、国民負担生じる恐れも あいまいになる、財政政策と金融政策の境界

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第一の方法は、通常考えられている伝統的な金融政策が効果を示すルートだ。しかし金利がゼロに近い超低水準にある現状では、金利低下で一般企業の資金借入需要が増えるという効果はほぼ出尽くしている。さらに現在のように企業部門の資金余剰が大きい状況では、そもそも企業にそれほど大きな資金需要があるとは考えにくく、貸出(借入れ)を通じたマネーストックの増加にはあまり期待できない。

「財政政策+金融政策」ならインフレに

今回決定された政策で効果が不十分だったときに、マネーストックをさらに大きく増加させようとすれば、主として第二、第三の方法を推し進めることになるはずだ。

第二のお金を配る方法では、保有部門の正味資産が増加する。フリードマンが「ヘリコプターからおカネをばらまく」というたとえ話をしたのは有名だが、現実には、日銀が大量にお札を刷って企業や家計に配るというわけにはいかない。しかし政府と日銀が一緒になれば、同じことが実行可能だ。

近年の日本の政策では、所得減税や地域振興券、子ども手当などがこれに近い。政府が国債を発行して減税をしたり地域振興券や給付金を配ったりし、日銀が国債を買い入れれば、日銀と政府の協力によって現金(あるいは現金同様に使える地域振興券)をばらまくことができる。

第三の方法は、日本銀行が様々な資産を購入して代金を支払うことだ。貸借対照表では、保有部門の様々な資産がマネーストックである現金や預金と入れ替わるが、それで正味資産が増えるわけではない。

この方法は、(1)国債や社債、株式などの金融資産を日本銀行が購入して、マネーと交換するという金融資産内の資産の移動と、(2)土地や建物といった不動産などの実物資産を日銀が購入して代金を支払うというマネーと実物資産の交換の、二つの方法に分けることができる。

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