カープ劇的優勝を支えた「老スカウト」の眼力 71歳の裏方は「将来の活躍」をこう見抜く
25年ぶりにプロ野球セ・リーグ優勝を成し遂げた広島東洋カープ。40歳前後の黒田博樹、新井貴浩という大ベテランが投打の柱となり、野村祐輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也といった20代の若手がかみ合い、2位以下を大きく引き離しての独走だった。
優勝マジックを順調に減らしていた9月上旬。秋の東都大学リーグが開催されている神宮球場のバックネット裏で、多くの関係者や観客から「おめでとうございます」と一足早い祝福を受けていた人物がいた。
「みんなの力でここまできましたよ」
苑田聡彦、カープのスカウト統括部長を務めている。年齢は71歳だ。1964年にカープに入団して、外野手、内野手のバイプレーヤーとして1977年までプレー。引退後は40年近くカープのスカウトを務めており、50年以上にわたってカープ一筋の野球人生を送っている。
「みんなの力でここまできましたよ。口には出さんけどね」
そう言って、老スカウトは照れ笑いを浮かべた。今季のここまでの躍進ぶりは想像していなかったという。
「やっぱりベテラン2人(黒田、新井)がチームに与えた影響が大きかったのかな。彼らは口だけじゃなくて、自分でも練習しますからね。シーズンが始まる前に新井と会った時に、『数値が高くなりました』というから『糖尿か?』と聞いたら、筋力の数値のことでした(笑)」
苑田スカウトは、この黒田、新井の2人の入団にかかわっている。ともに「王道」とは言い難いプロ入りへの歩みだった。
すでによく知られた話だが、黒田は高校時代、控え投手だった。そんな黒田を専修大下級生時に見た苑田スカウトは「一目惚れした」という。
「いいピッチャーは投げ方だけじゃなくて、立ち方、走り方、シルエットすべてが格好いいものなんですよ」
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